前夜


 ラランとコジョウに何を言おうかと待ち構えていたキザンだったが、警察からの招集で、今回の作戦に係る者すべてが集められた。


「作戦はいたってシンプルだ。我々が敵を撃退するので、その後透明なナイフに命色をしてもらうことになる。数の上では我々が圧倒的に有利だが、敵地故に何が起こるかわからない。弓は飛んでこないと思うが・・・」

その最後の言葉に、ユーシンを除いた仲間たちは


「それだ! 」

「そうか! それが狙いか! 」

「くっそー考えてやがる! 」

ラランは黙っていたが、その意見に賛成なのは明らかだった。


「操り人形は弓は射ない、切れてしまうから、と彼らが生まれてからずっとそう言われているが、そうではないと? 」


「それを調べるために、父はここをすぐに去ったのでしょう」


コジョウの言葉は、家に帰ったサイサイの看護のためと思っていた警官の目を、驚きと尊敬に満ちたものへと変えた。ほどなくキリュウからのハヤブサ便が届き、サンガが牢の中で気が付いたことが、さらに詳細に書かれてあった。死体に明らかに「弓の練習」をした跡が残されていたことも。


「計画を練り直さなければならないか」


「そんな時間はありません、一刻も早くサンガさんの救出を。彼の命色の能力をどうも「失わせる」ことが目的の様です」


「ララン・・・本当に行くつもりなの? 」


「リーリーさん、行かなければわかりません。聖域の山の中にどれぐらいの人がいるのかも。それにあの少年は誰かわかりますか? 」


「数年前、男の子の誘拐事件がこの近辺で五件あった。三件は聖域の山の手前で食い止めたが後の二件は・・・」


「それだけ、ですか? 」


冷たいようなそのラランの発言に周りは黙ってしまった。


「本当に未解決の誘拐事件と、誘拐を装って・・・・親がわが子を・・・・・」


「その子の可能性が大きいですね、むごいまでの不信感を感じますから」


「黙っておいてすまなかった・・・・・」


そのことが最後で、みんな解散して明日に備えることになった。



「警察がまだ私たちに何かを隠しているように思うのですけれど」

と命色師とユーシンが揃ったところでラランは言った。


「ララン、僕たちは戦いは初めてだし、そのことが主ではない、言われた通りに動こう。疑問があっても、彼らは僕らを守るためにそうしていてくれるのだから」


「俺も賛成、ラランちゃんがむしろ全部見えて、俺の死ぬところまでって言うのは勘弁してほしい」


「それはないです、キザン」


「それはありがたいね、とにかく休もう、明日は早い」


「おやすみ」「おやすみなさい」


コジョウとラランはいつものように別れた。それを他の三人は温かく見守った。




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