この色とともに  




「そうなんだ、まあ、だからこちらとしては払った金額分の仕事はしてくれたとは思っているんだ。だが、その・・・命色直後からこの状態でね、まあちょっと文句らしきものを言ったら、なんて言ったんだか、自分はその・・・」


「散色師」リュウリははっきりと言った。


「そうそう、その散色師だからこのやり方しかできないって。それにこの植物は白化には強い、これだけの広さだったら半分ぐらい命色すれば戻れるだろうって言うんだが・・・半年間ずっとこのままでね」


「さんしょくし・・・?」とラランは首をひねった。


「散色師っていうのはとても珍しい特殊な命色師だよ。手に色をべったり付けて白化したものの上をなぞってゆく、って本には書いてあったけれど・・・」


「そうそう、そうやってたよ、走り回ってね」と他の男性が言った。


「そうですか、命色の学校に出来る生徒がいるって聞いたことはあったんですが、その彼なんでしょう。わかりました、二人でこのまま命色します。夕方、迎えに来ていただけないでしょうか」


「もちろんだよ、よろしく頼むよ」と町の人は帰っていった。二人だけになったので、リュウリはラランに話し始めた。


「散色師というのは命色の歴史から見ても、百人にも満たないんだ。真実かどうかも疑わしいとさえ言われていて、それにここ二百年は現れていない」


「二百年前、混乱の時? 」


「そう、世の乱れるとき散色師が現れるとも、世を乱す、ともいわれているんだ。ごめん、話してあげてなかったね」


「それはいいのだけれど、どうやって?この広さじゃ色が足りないのに」


「そう、足りない、だからどうすると思う?」


「バケツ? 」


「ハハハ、ラランにしては直球だね、そう、思いもつかない、彼らは血をその色に変えることができると言われている」


「そんなこと・・・」


「でもそうらしいんだ、だって命色だってどうしてできるのかまだよくわかっていない。僕たちだって、手から命色線とか、命色光と言われるものが出て、それで命色が出来ていると言われている。確かに何か出ているような、出しているような気がするけれどわからない。でもとにかくここを命色しなきゃ。見るとどうも広がるのを抑えるために、端の方はきちんと命色されているみたいだね。学校に行ったもののほとんどは、モウ家の当主からのテストだから、合格しているということは」


「でも・・・」


「ラランにも命色を手伝ってもらわなきゃならないけれどいい? 」


「ええ、始めましょう」夕方まで一緒に命色をした。一か月はかかるだろうと二人で話した。

 

 二人は町の人の家に泊めてもらうことになった。朝は歩いて仕事場に行ったが、帰りは迎えに来てもらうことにした。何故なら二人ともくたくただったからだ。だが、日に日に慣れてゆき、二人の命色の腕はお互い目に見えるほどに上がっていった。そしてラランがリュウリに言った。


「どうも私が勘違い、というか、感じ間違いをしていたみたい」


「どういうこと? 」


「最初見た時はひどいと思っていたの、でもそれは私の考えで、彼ら自身は違った 

 の」


「どんなふうに?」


「その・・・「まあ、しょうがないか・・・」と思っていたみたい」


「ハハハハ! 命色されないよりはましってことか! 」


白化しているものと、命色師の持っている色とが合わない場合は、とりあえず色を入れている方が命は伸びると言われている。植物はそれが特に顕著なのだ。


「そう、思ったほどめちゃくちゃな人間ではなさそうだね」

リュウリの言った通り、町の人に詳しく聞くと、さばさばした感じの良い男だったという。

「とにかく食べてね・・・それでお金も欲しいけど食料の方がいるっていうから、こちらとしては助かったんだけど」という話だった。

血液を撒くのだから、それは当然なことだった。


予想通り一か月かかり、何とかすべてを命色できた。

「きれい! 」「わあ! キラキラしてる! 」「ミツバチがこんなにたくさん! 」全部が出来てから人を呼んだため、たくさんの人がそう言ってくれた。


「ありがとう、リュウリ、ララン、しばらくここでゆっくりしていったらどうかね」


「ありがとうございます、でももうすぐ雨期に入るので、今のうちできるだけ先に進んでおきたいのです」とリュウリは答えると代表者が歩み出て耳打ちした。


「休まなければいけないよ・・・次もあるのだから」

ラランにもしっかりと聞こえた。









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