ネットカフェを宿にし、売春で生活費を稼ぐ生活を送っている女性の物語である。描写が非常に生々しく、読者は実際に自らが望まぬ性行為をしているかのような錯覚を起こすかもしれない。そうであるからこそ多くの方に読んでいただきたい作品である。
注目すべきは主人公が自分を救済されるべき弱者と感じていないところである。むしろその認識が根拠のない熱狂である、と突き放している。これは多くの似たような小説に見られない点である。多くが、私もしくは彼女は非常に不幸だから、社会を変えてそのような人たちを減らさなければならないと訴える。昨今の貧困問題をテーマとした中では今までにない小説ではないか?
「……でも、あなたはまだ社会から見える存在だから食えなくてもまだマシよ」
と主人公は取材を受けながら考える。人々の言う社会とは一体何だろうか。