僕らの世界が終わるまであと一秒

つきがせ

第1話 綺麗なモノ

《世界最後になれば、あなたなら何をしますか?》


小学生の頃、こんな道徳の授業をしたのを覚えている。その先生はみんなに愛された女性教師。子供扱いが過ぎて、僕の親友みたいな他人は大嫌いだとか。まぁ、僕も大嫌い。


周りの馬鹿な奴は「火星に行く」だの「好きなことをする」など。


親友のような他人は僕と同じような変わり者。そんな変わり者の一人の友達に世界最後に何をしたいかと聞いてみると、


「綺麗なものを見て死にたい」


綺麗なものといっても思いつかない僕は思わず尋ねた。


「綺麗なもの?」


親友のような他人は例え話をしてくれた。


「例えば、今は当たり前で普通の美味しいリンゴ。でもね…」


数秒の沈黙に僕は戸惑いもなく焦らされているのはよくわかる。周りの馬鹿な奴らは

「はやく」だなんて言うのだろう。

何故、焦らすのか。

お話し上手のお嬢さんだから。


「死ぬ前ならとっても美味しいと思うの。だから、虹とか死ぬ前に見て綺麗だと思って死にたいの」


「具体的だね」


「結末なんて勝手な自論。だから、夢なんていくらでも見つける事が出来るのと同じ。だから、君も考えれば」


「僕?」

僕は彼女に聞いた。


「あなたしかいないわよ」


きっと、そう言うとわかっていた。


「僕ら庶民に何が出来るかもわからないよ。」


「何も出来ないから夢があるのよ。希望みたいなのを言えっての」


友達はたまに口が男みたいになる。


「うーん…。死にたくない」


呆れられたのかため息をつき、前を向いた友達。だから、僕に友達がいないんだ。僕は自分に呆れた。僕は窓の外を見て呆れた自分を紛らわしていた。

すると、友達は僕の方へ振り返り、ショートカットのふわりとした髪が風に撫でられシャンプー香りがした。僕の一人の友達は僕の方に振り返ってわざわざ口を開いた。


「別にその考え嫌いじゃない」


その目はなんだか、いつもの友達のように思わなかった。男口調になる事が多いのに__。

なんだか、とても可愛く見えた。それも、えくぼがよく見えた笑顔だった。

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