最終話 開かない私
亜紗見はフラフラする足つきで水を飲みに行った。水道場に行って、コップに水をいれた。すると
ブーブーブー
電話が鳴った。
電話はいつも圏外なので繋がることはなかった。亜紗見は思わず床にコップを落としてしまったけどそんなことは気にせずにすぐに机の上の電話に飛びかかった。
電話に出ると、
「亜紗見ぃー!あさ…!亜紗見!亜紗見!」
聞き覚えのある声、亜紗見はすぐにわかった。これは勝の声だと。少しノイズが入っているが、亜紗見は少し大人びている勝の声を聞いて思わず泣いてしまった。こんなに泣かされる日は早々にない。
「勝!勝なの!ねぇ!」
ブチっ
携帯の充電が切れた。
「どうしてなの…こんな時に」
後悔だらけの心情だった。
亜紗見は希望から絶望に叩かれた。
亜紗見は思わず携帯を落としてしまった。
その瞬間後ろから金属音ががした。
思わず後ろを見るとあんなに頑丈な柵がバタンと倒れている。
亜紗見は再び希望を持った。
亜紗見はフラフラする足つきなんか気にせず、走った。頑丈な柵を踏んづけてドアを開けた。
ドアは簡単に開いてそこには光があふれ出ていた。
亜紗見は勝った。七年間の歳月のなかでの監禁生活に何度か死のうと思ったが、希望を持って諦めなかった。
いま彼女は絶望と孤独から解放された…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…
?
目を覚ますと白い天井、亜紗見はすぐに理解した。ここは病院だと。
「先生!亜紗見さんが目をさましました!」
女の声がする。きっと看護師だろう。
「亜紗見!亜紗見!」
「亜紗見私たちが誰だかわかる?!」
お母さんとお父さんの声だとすぐに気がついた。亜紗見は少し歳を重ねた両親の姿を見て号泣した。
「お母さん…お父さん…」
「亜紗見!」
抱きついてきたお母さんとお父さん私は嬉しすぎて言葉が出なかった。
「亜紗見…起きてくれてありがとう…」
勝の声だ。やっぱり大人びている声だ。
「勝…ずっと待ってくれたの?あと声変わりした?」
勝は涙を出しながら言った。
「バカヤロウ…声変わりするのは当たり前だろ…」
医者が来た。
「亜紗見さん?自分の本名言えますか?」
亜紗見は泣きながら笑顔で言った。
「神山亜紗見です!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
亜紗見は数日間のリハビリなどを受けて病院を出た。
病室で亜紗見は全てを知った。
両親は家仕事に出かけている
「どうして私の監禁されてる場所がわかったのそもそもどうして嘉川先生にバレずに病院に運んできたの?」
亜紗見は自分がドアを出てすぐに倒れてしまったと思っていた。
勝は不思議そうに言った。
「…?何言ってるんだ?お前は7年間ずっと植物状態でここに寝ていたんだよ。」
…?
「何言ってんの?それ本当?」
「ああ本当だ。七年前に嘉川の野郎に金属バッドで頭を殴られてそのまま意識がずっと戻らなかったんだよ。」
ガヤガヤとする病院の音なんて聞こえないくらいに亜紗見は驚いた。
亜紗見は監禁生活の全てを話した。勝は最初は驚いていたが、だんだんと考察を言ってきた。
「多分だけどねお前が好きな食べ物食べられたのは毎日必要な栄養をとっていたからなんでも食べられたんじゃないか?
あとそのビビらん!とかゆう番組はもう多分終わっている。少なくともおれはここ最近全く見たこともないぜ
好きなものがなんでももらえたのはお前の夢で欲しいものは大体出てくる。
周りの景色が自然なのはバッドで殴られる直前に森を守ろうってポスターが電柱に貼ってあるのを見て倒れたからじゃないか?
あのポスター丁度お前が殴られた近くの会社が発行してるらしいし。
多分電話とゆうのはお前が頭の傷が悪化した時に意識が戻り始めたからおれの声が電話という形で繋がったんじゃないか?」
勝の言うことのほとんどに亜紗見は納得した。
「たしかにあり得ることばっかだね、」
「だろ」
「そういえば私の同級生みんな卒業したの?」
「…そうかお前は7年間寝ていたもんな…
お前が植物状態になった二日後に爆破テロが起きたんだ。」
「!!」
「それ本当?!」
「あぁ、百人程度の重軽傷者と十一人の死亡者を出した日本最悪の爆破テロ事件が起きたんだ
俺はお前がやられたショックで家に引きこもっていたから無傷だったがな。」
「三笠は!?みんなは!?」
「三笠は死んだよ。直撃だったんだ。」
亜紗見は泣いた。
「大丈夫か…」
「続けて…」
「…犯人はお前を殴った嘉川のやろうだ。
あいつは人が死ぬ姿とか苦しむ姿を見たいからこの事件を起こしたらしい。
自白したあいつはすぐに死刑判決を受け、
今頃地獄に叩き落とされてる頃だと思うぜ
本当、胸糞悪い事件だよな」
勝は悔しそうに言った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
病院を出た日、自分を見つけてくれた女の人にお礼をしに行った。
あの時は聞いた懐かしい声とこの女の人の声が同じことがわかった。
多分あの時聞こえなかった声は「救急車を!」だろう。
その後に学校へと行った。学校の校門前には沢山の花束とお供え物が置いてあった。亜紗見は学校に来る前に買った花束を校門の前において手を合わせた。
(どうか三笠が天国で幸せに暮らしていますように…
三笠…あんたの分まで私は生きるよ。)
亜紗見は悔しそうに泣いた。
五年後
亜紗見は勝と結婚していた。
亜紗見は妊娠中でもうすぐ生まれるらしい。
勝はケーキ屋さんを務めておりテレビが来るほどの人気店になっていた。
亜紗見は幸せだ。
こんな幸せは監禁生活では一度もなかっただろう。
亜紗見は今思うと、あの監禁生活は
実際、自分から孤独を望んだんじゃないかと
ストレスがたまっていてあの時は誰にも構って欲しくなかった。
でも監禁されて人の大切さや優しさ、思いが今となっては身にしみるほどわかった気がする。
開かないのは扉ではなく、私自身が開かなかったのだ。
開かない私 終わり
開かない私 GARA @36363609976433
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