第463話 大きさの問題は関係ないんです!

「ちいさい?。人間サイズよりもですかぁ?」

 しょうとが眉根をよせて困惑する表情をみせた。が、それとは逆にミサトはすこしホッとしたのか、かるく嘆息しながら文句を言ってきた。

「ちょっとぉ。そんなにちいさいなら、脅威じゃないでしょう。まったくあわてさせないでくれる?」 


「カツライ司令。大きさの問題は関係ないんです!」

 カツライの非難にエドが声を荒げた。今、責められているのは金田日だというのに、あまりに無遠慮な物言いが我慢できなかった。だが、その激高した姿にカツライだけでなく、その脇にいるヤシナ・ミライ副司令も驚いた表情をむけてきた。

「人間よりちいさいのに、内包するエネルギーはとんでもなく巨大なんです」

 エドは今度は慎重にできるだけ落ち着き払って口調で言った。春日リンがそれに加勢するように、

「では、ちいさくても亜獣並に注意が必要ってわけね」

「えぇ。危険だと思います」

 リンがすぐさまヤマトたちに言った。

「タケルくん、アスカ、ユウキも聞いてたわよね。油断しないで!」


 その時、金田日が声をあげた。

「亜獣が出現します」

 司令室の全員がヤマトたちのいる『東京トンキンの現場を映し出しているモニタを注視した。

 ヤマトのマンゲツはすでにアスカやユウキたちと合流していたが、そこから百メートルほどしか離れていない空間が歪みはじめていた。

 やがて、空間の一部に裂けるような切れ目がはいると、その切れ目から小動物を連れた魔法少女があらわれた。


 それはそれまでの魔法少女とちがっていた——。

 フリルいっぱいの服装や短いスカート、パステル調の淡い色合い、からだの各所にあしらわれたアクセサリ、そしてセルロイド製らしきチープな少女のお面——。

 たしかに外見や服装はなんらほかの魔法少女と変わるところはない、


 だが、体型がそれまでの魔法少女とはまったく違っていた。


 この魔法少女はほんとうに少女の体つきをしていた。ぴったりとフィットした服の下のからだのラインは、まだ成熟しきっていない瑞々しさが感じられた。

 それは鍛え込まれて作られた肉体が見せるラインではなく、あふれんばかりの生気によって、内側から成形されていて、パーンとした張りがあってなめらかな輪郭だった。

 その足元には、黄色とも白ともつかない二本の大きな耳をもった小動物が浮かんでいた。


「なんなのあれ?。まるでイオージャのミニチュアじゃない」

 ショートが誰もの頭に浮かんでいただろうことを、ストレートに言い放った。

 だが、エドは確信していた。この小動物と、麿法少女は、あのナポリの路地裏にあらわれて、ジョルノという男を魔法少女に勧誘した連中だと……。

 小動物が空中をちょこちょこと、二、三歩歩いて前にすすみでた。


 わずか100メートル目の前で身構える三体のデミリアンを、ガラス玉のような表情のない目でキョトンとしたようにして見つめた。

 そして線で描いたような小さな口を開いた。



「ぼくは輝舳キーヘー。ぼくと契約して魔法少女になってよ」

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