第437話 魔法少女にされたの。無理やりにね

 その東洋系の女性の右腕の付け根と、左腕の付け根部分には、腕の代わりに男の頭がくっついていた。

 三つの頭を持った異形の女性の姿の全体像が画面に映ると、草薙は映像をストップさせて首を横にふりながら言った。


「警備員のアブドゥルとイギー……、魔法少女にされたの。無理やりにね」


 司令室内に先ほどまであった、いかばかりかの勝利の余韻が一瞬にして消し飛んだとユウキは感じた。

 だれもが口をきけなかった。

 おそらくその意味を頭のなかで想像しているにちがいない。結論はとっくに出ているはずなのに、信じたくないあまり、ちがう可能性ばかりをループさせているだろう。

「つまり、魔法少女につかまったら、ああなるってこと?」

 単刀直入にその事実を確認したのは、やはりレイだった。

「レイ、なに言ってるの。魔法少女は契約を結んでなるんでしょ」

 その事実を認めたくないのか、あわててリンがそれを打ち消すような発言をかぶせてきた。その目がミサトのほうにチラリとむいた。

「あのイタリアの映像であったでしょう。なにものかと契約して……」

「そうだとも、ぼくもそれは聞いた。魔法少女はキーへーと呼ばれるなにかと、子供のような誰かと契約を結んではじめてなれる存在のはずだ」

 そう強行に抗弁してきたのはエドだった。


「大変申し訳ありません。さきほどの発言、一部訂正させてください」

 意外にも草薙はふたりの抗議をすなおに受け入れた。

「あの二人は無理やり魔法少女にされたのではなく……、無理やり魔法少女の一部にされたんです」


 そのとたん女性クルーのひとりがその場に崩れ、ガタガタと震えはじめたかと思うと、別のクルーは突然泣きじゃくりはじめた。

「正確に伝えたはずですが……」

 草薙にはその事実の持つインパクトがわからないようで、つい弁明めいたことを口にした。


「まるで部品扱いっていうわけぇ?」

 憤りを隠せない口調で言ってきたのは、カツライ・ミサトだった。

「はい。そのようですね」

「で、草薙大佐、決行直前の作戦を無理やり停止させたのは、これを伝えたかったからっていうわけ?」

 あきらかにミサトは気分を害している口調だった。

 ヤマトにはこの程度のことで作戦を中断させたことに対する、草薙への怒りが含まれていると感じられた。


「いいえ。これではありません」

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