第436話 この死体たちも魔法少女っていうわけ?

「えぇ。そうなんです。この女性には羽根が生えているんです」


 そう言ってから草薙がふたたび映像を動かしはじめた。ミサトがすこし困惑気味に聞いてきた。

「ど、どういうこと。この死体たちも魔法少女っていうわけ?」

「はい。あ、いえ、正確にはそうではない。すくなくとも、わたしは……ちがうと思っています」

 その曖昧あいまいな言い方に専門家としては黙っていられなかったらしく、金田日が強い口調で草薙に答えを問うた。

「草薙大佐。それはどういう意味なのかね」


 その時、黒人女性を映し出しているカメラの前を、別の個体が横切った。司令室の女性クルーのひとりが「きゃっ」と短い悲鳴をあげた。

 カメラの前は横切った人物は筋肉隆々の男性だったが、その首の部分には頭はなく、白人女性の腕が生えていた。

 草薙はその様子を横目でみたあと、金田日にしっかりと見すえてから言った。


「この死体こそが、魔法少女だと」


 草薙は遠慮することなく、はっきりと断定した。そしてすぐさま春日リンにむかって尋ねた。

「春日博士。先日の武漢での戦闘現場では、魔法少女の死体が回収されなかったということですよね」

「あ、ええ。そうよ。死体の血や肉片はあったんだけど、ひとつとして死体はおろか、頭や手や足のようなまとまった部位は回収できなかったの」

 それを聞いて、レイが口を挟んできた。

「つまり、バラバラになっても、そのパーツごとに生き返って、もう一度組み合わさるっていうこと?」

「その可能性が高いとわたしは結論づけました。それなら今までわかった事例と整合性もとれるからです」

「つまり、魔法少女はただ倒すだけじゃダメってことだね」

 ヤマトは草薙の意見を全面的に受け入れたようだった。

「そうなの、タケルくん。四肢が残っていれば、それはパーツとして使えるんだと……」

「は、そのとんだリサイクル魔法ね!」

 アスカが吐き捨てるように言ったが、まだ言い足りないのか草薙に文句を言った。

「でも、なんでもっと早く連絡こなかったのさ。草薙大佐、それだけの情報網をひいてたんでしょ」

「そうね、アスカ。こちらも予想外だった。本当は今日の警備員、アブドゥルとイギーが、なにかあったらすぐに連絡をくれるはずだったの」

「その警備員たちの怠慢っていうわけぇ?」

「いえ、そうじゃないわ……」

 そう言いながら、草薙が映像を早送りにした。

 ふたたび映し出された映像はさきほどの、保管室ではなかった。それは警備員室のようにみえた。正面にはいくつもの映像スクリーンがあり、手前にはアナログっぽい操作パネルがある。

 ふいに警備員室にヒスパニック系と思わしき、男性の姿が映った。が、すぐにその横に東洋系の女性の顔、そして今度は黒人の顔が映った。

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