第348話 ヤマト・タケルのたくらみ

「十三、絶対バレないよね」


 ヤマト・タケルが『リアル・ヴァーチャリティー装置』のフェイス・ラッピング・ディスプレイを、顔からはぎ取りながら言った。

 今は真夜中で、だれもが眠りについていたが、ヤマトはパイロットエリアのキッチン奥の隠し部屋にいた。一緒にいるのは沖田十三だけだった。これは国際連邦軍の連中はもちろん、アスカたちほかのパイロットたちにも気取られてはならない案件だった。

「エル様、ご心配なく。エル様がジョン・ブランドーという男の、ペルソナを乗っ取って行動していたことは一切知られることはございません」

「テンマ・セイヤか?」

「はい。前回調達した重装機甲兵『ジドム』と同様、今回も彼の仕事です」

「なら、頼みたいことがある。つなげるか?」

 ヤマトがそう言うと十三は返事をすることなく、すぐに回線を接続させた。


 伝増・星埜(テンマ・セイヤ)はすぐに繋がったが、部屋は暗くてほとんど見えなかった。モニタ画面から漏れでる光のおかげで、かろうじてそこに人がいることがわかるという状態だった。黒い影が忙しく指をヴァーチャル・コンソールにむかって動かしているのがわかる。そのスピードは尋常ではない。

 黒い影が顔をあげた。目だけしかみえない。だが、相手はヤマト・タケルであることを知って、思わず声をあげた。

「おやおや、ヤマト・タケル、珍しいね。ぼくの仕事は気に入ってもらえたかい?」

「『生体認証』や『個人ID』も問題なくすり抜けた。さすがだよ」

「ジョン・ブランドーはお堅いきみにはぴったりのペルソナだったろ。本物は今ごろちょうど叩き起こされた頃だと思うがね」 

「そうか……。彼には災難だったね。でもいい仕事だった」

「親父さんの頃からのご贔屓だからね。お役にたてて嬉しいよ。気になっていることはわかったかね?」

「今回の事件がわかって本当によかった。もうすこしで大変なことになるところだった」

「それはよかった。報告したかいがあるってもんさね」

「この事件のこともきみが十三に連絡を?」

「まぁね。なにせ、親父さん、いや、今までのデミリアンパイロットたちの遺志だからね。きな臭い事件を感知するシステムに抜かりはないよ」


「さすが、神の名を騙る男、星埜セイヤだ。助かったよ」

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