第3話「ミニホラー」

今日はなんか気分が良い!

緊張も解けて、楽しそう……て無理矢理思ってる


でも、これだけは声に出して言える……


天方は両手を精一杯伸ばしながらお風呂に浸かって漏らす様な声で言葉を零した

「あー、ボッチは免れたー」


「ボッチを免れた?君、面白い事を言うね。」

風鈴が似合う声が聴こえたかと思えば花笠だった。


「そーでしょー?まぁでもこんな僕がそんな面白い事を言えるようになったのは昨日話し掛けてくれた友達のおかげだよ!」

天方は自慢する無邪気な子どもの様に熱弁する


「昨日話しかけてきた友達ー?へー、その人って凄い人なんだね」

その熱の入った話し方に花笠は眉に乾いた汗を垂らしながら引け目な声で応える


「凄いよ!だって僕が凄いって思ったから!」

熱があり過ぎて小学生並みの言葉を放つ


すると花笠は苦笑いを浮かべて心配を投げ掛ける様な口調で「へー……て語彙力大丈夫?」と話し掛ける


すると天方は思いの熱さを精一杯の長言葉で誇らしげな表情で語り始めた


「大丈夫大丈夫!貴方は繊細かつ妖艶な魅力をいつも纏い、僕の心境をコロコロ変化させ困らせる。しかしそんな困った僕を前にも変わらぬ貴方の心境、貴方と僕の関係……それは互いの干渉により貴方は変化せず僕は変化する。

まるで触媒のようだ。しかしこれでは、僕の一方通行……溶媒にしなくてはな、て、事でいっそのこと、互いに化学反応する為に今度は言葉と言葉ではなく、肌と肌で、……いかがですか?僕のスカイツリー、興味はございませんか?」


すると熱過ぎてオーバーヒートしたヤカン並みのテンションで話す天方に花笠は流石に引いた


「あの、後半セクハラになってます、このままだと、私転校してしまいそうなくらい貴方によって触媒されているんですが……それについてはいかがお思いでしょうか?あ、の天方、容疑被告……」


冷静で冷たい口調の花笠に天方の熱は冷まされ我に返る


「すみません……それについては深く謝罪を申し上げます。すみません」


それでも天方は少し調子に乗っていた


「まぁ、それについてはどうでもいいんです。そんなことよりその、そんな貴方を拒絶しなかった友達の名前を教えて頂きたいです、貴方経緯でその子とも友達になりますので、」


花笠は完全に引いている。そんな引け目な仕草態度に天方の心には凍てつく氷点下の風が吹く


「え?目の前に居るじゃん。」


それでも曲げない天方


「誰?」


「貴方の事でございます!」


「私!?」


「そう」


「私、貴方と友達になった覚えないけど……てか、貴方と友達って、ふふっ……その顔で、やっぱごめん」


この時点でトドメ程の威力の槍が天方の心に刺され更に


「言わないでっ」


「友達どころか挨拶すら願い下げだわ。」

という言葉でトドメに更に強いトドメを畳み掛けた。


「あ」


放心泣きそう心理状態の天方髻


「さよならー」


挨拶された

確かに昨日友達になったとかなろうよとは、一言も言われてない、勘違いって事か……


ーーそういう事ではない……避けられたのであるーー


「ふふっ」

突然水差しの様な女子の笑い声が聴こえた


「笑わないでっ」

天方は自業自得でありながらそれを自覚していない。それでいて涙をキラリと浮かべていた。


「ごめんごめん」

苦笑いながらも軽い声で謝る女子


「良いんですよ、僕の勘違いという事なので」


「んー、その勘違いの対象によるんだけど、もし友達かどうかって事なら、安心して良いと思う。多分」


「多分ですか……でも、だとしても、安心ってどっから来たんですか?」


「そもそも、友達とすら思ってないとの事で、落ち込んでいたように見えたけど、友達で満足するなら、そういう意味で落ち込む必要はないわ、と言いたい」


「友達なら大大大満足だよ。それよりどういう意味?」


「喋りよ」


「喋り?」


「声は似てても返しは似てない、これで分からなきゃ……私泣くよ?冗談だけど。」


「つまり今日来てたのは花笠じゃ無いと……似てる似てないってワードがあるって事は姉妹か?」


「そうよ。」


「確かに、頷ける部分は多々ある。昨日の花笠ならきっと」


「あらゆる角度で勘違いをさせるような事をしては貴方を弄び楽しんでる。」


「だが今日の花笠は」


「勘違いを誘う言動は全くしない上に貴方を全く弄ぶ様子もなく寧ろ避け気味だった、それに楽しそうでも無かった。」


「ねぇ、良いとこどりしないでよ。僕が言える唯一の推理っぽい言葉だったかもしれないじゃん……」


「すみません……つい私の推理力が……」


「まぁ、一つ言えることは、楽しむ事は姉妹でも全然違ったという事だ、うん、これで一つのミステリー案件を、解決致しました。」


「それは良かったですね」


「良かった。あ、私の名がまだだった、私の名前は日向 芳(ひなた かおり)!隣の席だから、推理してほしくば、話しかけなさい!」


「……」


「話しかけてください!ボッチだけは嫌です!」


「分かったよ」


次の日


「私姉妹も何も一人っ子だけど、もしかして私の毒気のある避け言葉を聴いてしまって可笑しくなった?」


一人っ子?


「それともそれとも、昨日お酒でも飲んじゃた?未成年者は飲んじゃダメなんだよー?」


アイツ……


「あ、あの何気に避けを強調されると何かグサリとくるものがあるので、やめてください。」


まじ許すまじ……


「私も磨かれた先見性によって危機反応的なヤツビンビンして、グサリやっちゃいそうだったんですけどね、だからやめてくださいそして近寄らないで。」


磨かれた先見性で危機感?


「なんか本当にごめん、今後距離を取るよ」


分からんけど謝る、


「うん」







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