【乾師寿一】5



 敏和の声を初めて聞いた時の、あの感じ。

 敏和の姿を初めて見た時の、あの感じ。

 敏和の唇に初めて触れた時の、あの感じ。

 やっぱり、どんなに大きなバツをつけられようと、俺は『好き』だと思うんだ。

 ごめんね。俺は、全部知っていたんだ。

 君が俺を知っていたことも。

 君が、その罪悪感で側に居てくれたことも。

 でも隠してしまった。知らないふりをしてしまった。

 もう二度と、『ビビ』を失いたくなかったんだ。

 でも、キミは居なくなった。

 俺の前から、姿を消した。

 探したけれど、見付からないまま。諦められないまま。忘れられないまま、色褪せないまま。

 いつしか、四年も、時間が経っていた。



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