モリガン降臨
エレナが呪文を唱え始めると、辺りに眩い光が散らばってゆく。
やがて光がひとつに収束しはじめ、人のようなシルエットを形成していく。
光が収まっていくと同時に朧気だったその人形も次第にはっきりと、全貌を視認出来るようになってきた。
漆黒の衣装を身にまとい、妖しく光る深紅の瞳をその眼に宿した一人の女性が一行の前に降り立つ。
かつて“災厄の魔女”として恐れられていたモリガンをすることに召喚に成功したのだ。
目を閉じ、一息つくモリガン。
「…ふぅ、久しぶりの外の空気はおいしいわね。」
リラックスした様子のモリガンとは対照的に、一行の間には緊張感が走る。モリガンは再び目を開き一行に自分を呼んだ理由を問う。
「…それで?私を呼び出したってことは、何か私に聞きたいでもあるんじゃないの?」
「あの…、モリガン。どうして僕たちのことを助けてくれるようになったんですか?」
一行で最初に口を開いたのはなんとレヴォルだ。以前の、“災厄の魔女”に怯える少年の姿はそこにはもうない。
「ウフフ…、どうしてだと思う?」
私の考えを当てて見せろ、と言わんばかりにいたずらに微笑む。
モリガンらしいと言えばらしい。
するとアリシアが
「もしかして…、私たちを助けることが“お月さま”を助けることにも繋がってくるから、ですか?」
ドンピシャリ、と考えを当てられたモリガンが笑い声をこぼす。
まるで一行との会話を楽しんでるみたいだ。
「ウフフフフフフ…、ご明察よ。さすがアリシアちゃんね。」
モリガンとの会話はほぼ初めてのはずなのに、“ちゃん”付けで呼ばれたことに引っ掛かりを覚えたアリシア
「(え… アリシア“ちゃん”?)」
その横でティムとエレナは内緒話をしている
「(おいおチビ。モリガンって“ちゃん”付けするようなキャラだったか?)」
「(なんか最近ね、私たちに親近感をもつようになってきたみたいなんだ)」
エレナがリページを使用する度に、“再編の魔女”が経験してきたことがモリガンにも蓄積されていたのだ。
つまり両者の差は以前にもまして近くなってきたと言える。
「“モリガン”が“モリガン”としていられるのは、お月さまがいたからこそなの…。そのお月さまを助けるためなら私はなんだってするわ。」
「あとオリオン… 男爵ね。あいつも恐らく“良からぬもの”に、良いように操られている… お月さまと一緒にね。もともとはあんな下衆な男ではなかったもの。」
男爵やお月さまとは別の、更なる黒幕の存在を仄めかしたモリガン。シェインは追及を続ける。
「なるほど、“良からぬもの”ですか…。モリガンさんにはもしかしてその心当たりがあるのでしょうか?」
「ええ、おおよその見当はついてるわ。」
本当に!?と驚いた一行がいっせいに口を揃える。
「シャルル・ペロー… 最近私たちの前にめっきり姿を見せなくなったでしょ? …実はね、見たのよ。男爵にさらわれたとき、シャルルと男爵が密談していたのを。」
衝撃の内容が明かされた時、またもや一行は口を揃える。
『な、何だってー!?』
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