本当の敵とは

「さらに言うならキュベリエ。あれとも距離を置いた方がいいと思うわ。」

「私たちに内緒であいつら、(シャルルとキュベリエが)会ってるみたいだから。」

「私たちの前で咄嗟に初対面のふりをしたのも、きっと知られると不味いことでもあったのでしょうね。」

シャルルのみならず、キュベリエも敵側に与してるかもしれないというモリガンの発言に、一行は動揺を隠しきれない。


「モリガンさん…、それマジで言っているんですか?」

「行く先々でやたらプロメテウスや男爵と出くわすのってあいつらが情報を渡してやがってたからなのか!? クソがっ!!」

あまりに衝撃的な内容に、ついあらぬ妄想と乱雑な振る舞いをしてしまうティム。パーンはそれをたしなめようとする。


「落ち着けティム!まだ彼らが敵側だと決まった訳ではない。」

「けど先生… キュベリエ様とならともかく、男爵とも内密に会っていたとなると、限りなく黒に近くないですか。」

ひどく落胆した様子のアリシア。無理もないだろう、今まで信じてた人たちが裏切ってるかもしれないのだから。


パーンはしばらく考えこんだ後、モリガンに投げかける。

「うーむ… モリガン。念のため確認をしておきたいのだが、私達を混乱させて楽しむためにわざとやってる、なんてことはないよね?」

パーンが疑問に思ったこともまたモリガンのやりそうなことである。

しかしモリガンは

「言ったはずよ。“お月さま”を助けるためならなんだってすると。そのための手段なんて選んでいられないもの。」

「私が今まで色んな人にひどいことをしてきたのはわかってる… けど、徐々にでもいい。私を仲間として信じて欲しいの。」


モリガンの決意は固い。

今の言葉を聞いて、レヴォルはようやくモリガンを仲間として受け入れられるようになったようだ。

「わかりました、モリガン。僕は貴方を仲間として信頼します。」

「うふふふふふふ… 嬉しい、とっても嬉しいわ。」

自らが受け入れられたとことに、モリガンがエレナのような明るい笑顔を浮かべる。

エレナも『レヴォル…』と呟き、まるで自分のことのように喜んだ。


「あとモリガン、もうひとつ、聞いてもいいかな?」

「なぁに?レヴォル」

レヴォルとモリガンの距離が一気に縮まったようである。


「モリガンはこの一件が解決した後、どうするつもりなんだい?」

「確かにそれは気になります。教えて頂けますか?モリガンさん。」

シェインも気になったのか、レヴォルの質問に乗っかる。


「気が早いわね… まあ良いわ。」

「そうねぇ… お月さまと一緒になって、また物語を集める旅に出ようかしら?」

話し終わった刹那ギョッとする一行。モリガンはいかにも魔女らしい妖艶な笑みを浮かべる。


“物語を集める”というのはつまり、かつて魂の器だった時のように他の存在を取り込むということに他ならない。


エレナが叫ぶ。


「ダメーッ!ダメだよそんなの!」

「ちょっと… 私の真似しないでくれる?」

言い回しが似てると感じたのか、少しイラッとした態度でエレナに対応する。

「真似なんてしてないもん!」

にらめっこした後、なんだか可笑しくなったのか互いに「ふふっ」と笑いあう。

その様子はさながら、仲の良い姉妹のようだった。


「冗談よ… 恐らくお月さまが本当に救われたとき、きっと私たちの知ってるお月さまではなくなってるだろうから。」


「まったく… あんたの冗談は度がキツいんだよ」

全くもってその通りのことをティムが呟く。

シェインは新たな疑問を投げかけた。

「しかしお月さまがお月さまでなくなったとき、彼はいったいどうなるのでしょうか?」

「存在自体が消滅するかもしれないし、しないかもしれない。あるいは元の彼に元通りになるのかもしれない… いずれにせよ、この先どうなるのかは私にもわからないわ。けど、あの人のことをどうしても助けたいの…。」

「そのために私は“再編の魔女”を導く存在… イマジンになったのだから。」モリガンの決意に胸を打たれる一堂。

「だからみんな、どうかこれからもよろしくね?」


「ああ、こちらこそよろしく頼む。」

レヴォルとモリガンが厚い握手を交わす。これからモリガンと一行の間にも絆が育まれていくことだろう。




「モリガンが味方だとはっきりしたのは良いんだけどよ、これからどうする?」

「そうよね、キュベリエ様もあまり信頼出来そうにない。シャルルさんは怪しさ満点。これじゃあ…」

一行がこれからの進退を議題にしようとしたところで突如

「吾が輩がどうしたって?」

聞き覚えのある口調に凛とした少年の声が響き渡る

「久しぶりだな、諸君!」


赤髪の創造主、シャルル・ペローが現れた!






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