グリムノーツSS ~モリガンと再編の魔女一行~
シュナ
作戦会議
ここはフォルテム学院のとある場所。
会話の切り口を開いたのはシェインだ。
「エレナさん、モリガンさんをこの場に呼び出すことって出来ます?」
「うん、たぶん出来ると思う…。でもシェインちゃんどうして?」
ここ最近、“再編の魔女”たるエレナもまた、かつての“調律の巫女”のように創造主としての力を覚醒させつつあったのだ。
今のエレナであればもしかしたら、と思ったのだろう。
アリシアもすかさず会話に参加していく。
「モリガンの真意を確かめたいから、ですか?」
モリガンの話題が進むと同時に、レヴォルの表情もみるみるうちにくもっていく。
「ええ。最近のモリガンさんは、エレナさんや私たちのことをよく助けてくれますよね?なのでどういうつもりなのかな、と。」
「うん。もし彼女が今後も私達に味方をしてくれるというのであれば、これ以上頼りになるものはないといってもいいね。」
シェインの意見に同意を示すパーン。するとレヴォルは苦粒を噛み締めたように、重苦しく、口を開いていく。
「しかし、彼女は…、その…」
レヴォルの頭の中に、モリガンと初めて対面したときの記憶がよぎる。
「初めて出会ったとき、彼女はエレナの体を乗っ取り、僕のことをなんのためらいもなく殺そうとしました。正直、まだ苦手で…」
モリガンとの出会いがあまりに強烈なものであったため、レヴォルにはその時の記憶がトラウマのように頭の中にこびりついていたのだ。
「ああ…、王子サマの気持ちはよーくわかるぜ。ぶっちゃけ俺も苦手だし…。いけすかねーもんな、あの女。」
ティムが人に寄り添う言葉を口にするのに女性陣は意外そうな表情を浮かべた。
そんなことは気にも留めず、ティムは続ける。
「けど、だからといってここでもやもやしててもはじまんねーし、
頼みの綱のシャルル・ペローもめっきり姿を見せなくなったしよ…」
「だったらここではっきりと味方だとモリガンが示してくれれば、少しは王子サマの気持ちもラクになるんじゃねーか?」
「グッジョブです、ティム!」
人の気持ちに寄り添うティムの姿に、シェインは心から彼の成長を喜んだ。
背伸びをし、ティムの頭をわしゃわしゃするシェイン
「子供じゃねぇんだからやめろババア!」「良いじゃないですか♪」そんな他愛もないやり取りを終えた後、シェインは真剣な面持ちでレヴォルに向き直る。
「レヴォルくん、正直私も相手せずにやり過ごせたら…と思います。彼女とは調律の巫女一行の時から、色々と因縁が有りますからね…」
「フォルテム学院の協力もあり、プロメテウスや男爵たちを撃退することには成功しました。ですが、いつまた私たちを狙い襲ってくるかもわかりません。」
「シャルルさんも消息をたったまま… ここからどこを目指したらいいのか、見当もつかない状態です。」
「今の私たちには彼女の力が必要です。レヴォルくん、ここはどうか少し、こらえてはもらえませんか…?」
シェインのひと押しもあり、レヴォルはようやく一行とモリガンとの対談を了承した。
「大丈夫だよ、レヴォル!モリガンはもう悪さをすることはないよ…たぶん」
「多分かよ。けど自信有り気だな、おチビ。」
「だって、私とモリガンはもともとひとつだし。なんとなくだけど、最近モリガンの考えてることがわかるようになってきたから…」
「…それじゃあみんな、そろそろはじめてもいい?」
エレナが箱庭の王国を手に取ると周囲に確認をとる。
するとパーンが待ったをかけた。
「レヴォル、もし席を外したいというのであれば私も付き合うが?」
パーンはレヴォルがまだ無理をしているのでは、と気にかけていたのだ。
しかしレヴォルは
「いえ、僕は大丈夫です。お気遣い有り難うございます。」
「そうか… くれぐれも無理はしないようにな。」
心配はいらない、と皆の懸念を振り払う。
いつもの柔らかい表情に戻ったレヴォルに、エレナはホッと胸を撫で下ろした。
「それじゃあみんな、はじめるね。」
「ええ、エレナちゃんお願い。」
エレナは箱庭の王国を開き、呪文を唱え始める。
辺りが眩い光に包まれていく-
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