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彼との通話を早々に切ったのは、これ以上、話したくなかったからだ。
それに、彼女のためにまだすべきことがある。
私はノートパソコンを開き、彼女の火葬の手配をした。人間と同じようにお経を上げてくれるというもので、よそのペットと一緒に焼かれるようなこともない。骨もきちんと自分で拾えるし、骨壷に入れてくれると書いてあった。
ちょうど、明日の午後があいていて、予約を入れる。
そして、職場にも連絡をした。
明日は月曜だから、仕事を休ませてもらわなければならない。
私は、「身内に不幸があって」と言った。
本当のことだ。
今の私にとって、彼女以上の『身内』がいるだろうか。
電話口の向こうから、上司は、優しい言葉をかけてくれた。
電話を切るとすることもなくなり、しんと沈黙が落ちた。
静かな部屋。
もう、おやつをねだる声もなく、遊んでくれと呼ぶ声もなく、軽やかにキャットタワーに飛び乗る物音もない。
彼女は花の模様がエンボス加工された箱の中で丸くなったまま、ぴくりとも動かない。
また、涙が溢れた。
だめ、何かをしていないと。
なにか、なにか、なにかないだろうか。
心の中で思いながら、私の身体は動かなかった。彼女の眠るそばから離れられない。離れたらまた、私を探して鳴くんじゃないの…?
「大丈夫よ、ここにいるわ。ひとりぼっちは、寂しいものね」
何人かの友人にも、LINEで短く、彼女の死を伝えた。
友人たちは言葉を選び、私を慰めようとしてくれているようだった。
その中で、今はなんの返事もしなくていい、そばにいてあげて。何か温かいものを食べるんだよ、とメッセージをくれたのは、唯一幼い頃から関係が続いている友人だった。
言われて見れば、彼女を病院に連れて行ってから何も食べていない。
私はインスタントのスープをいれて、飲んだ。
魂の奥に染み入るようだった。
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