小さな身体を綺麗に拭いてやり、通販で届いていた箱の中で一番綺麗なものに彼女のお気に入りだったブランケットを敷いた。

 そしてその中に、彼女の身体を横たえた。

 私の膝で丸くなっていたままの形だった。

 キッチンに飾ってあった小さな花束を抜いて短く切り戻し、物言わぬ彼女のそばに添えた。


 涙が、ぽたぽたと落ちた。


 そうして私は、恋人に連絡をした。

 LINEで、「彼女が息を引き取ったの。寿命だって」、そう送ると、すぐに折り返し通話がかかってきた。

 あまり、人と話したい気分ではなかったけれど、優しい言葉が欲しかったから、通話を受けた。

 彼と話すこと自体、ずいぶん久しぶりに思えた。

 LINEでメッセージのやり取りはしていたけれど、声を聞いたのは久しぶりだった。

 彼は、開口一番、言った。


「ねこ、死んだの? 十八年だっけ、大往生じゃん」


 驚くほど軽い口調で言われ、私は眉を顰めた。こんな男だっただろうか。

 返事をせずにいると、彼はなおも続けた。


「これでお前、ペット可のマンションでなくていいんだから、俺のところに来れば?」


 …どうして私は、この男と付き合うことにしたんだっけ?


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