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あの子の具合がよくないようだと気づいたのは、秋に入ってしばらくした頃だった。
まだ冷える日も少ないのに、妙なくらいそばにいたがるようになった。あまりベタベタと甘えてくることもない子だったのに。
自分で毛づくろいをしなくなっていたことにも、後で思い当たった。とても綺麗好きで、毎日たっぷり時間をかけて念入りに毛づくろいをしていたのに。
ごはんを食べなくなってようやく私は彼女の異常に気づき、急いで病院へ連れていった。ケージに入れようとするといつも大暴れするのに、その日はすんなりと入り、病院へ向かう道中も大人しいものだった。
たった二駅の電車の揺れが、ひどく気になった。
お願い、揺らさないで。この子のカラダに何かが起きているかもしれないから。
予約もなく駆け込んだ病院の診察台に乗せても、彼女はとても静かだった。
ただ、私の姿が見えなくなると、驚くほど大きな声で鳴いた。
彼女がまだ手の平に乗るくらい小さな頃から世話になっていた初老の獣医は、短く、もう寿命だよ、と言った。
「どういうことですか?」
意味をはかりかねて問うと、彼女の柔らかな腹部に聴診器を当てながら、
「十八年でしょう。よく生きたと言ってやりなさい」
そう言われても、意味を理解するまでにしばらくかかった。
私はその日、彼女を家に、私たちが十八年一緒に暮らした家に、連れて帰った。
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