第14話 No Data of Yesterday 第3章 Gの使い道

旅人の記憶/Monday


そもそも自由に動けないだけでも苦痛なのだ。それなのになにも無いつまらない病院生活を実感しているだけでも今日で4日目なのだ。なぜこうも元気なのに明日まで入院せねばならんのか...。

でも、悪いことばかりでは無い。担当になっている看護師さんもなかなかの美人だし、最近は黛 彩(あや)もよく来て話し相手になってくれる。まだ合計で5日ほどしか関わっていないがかなり距離も縮まってきているように思える。しかも彼女は俺の話を聞いてくれた。多意識症のこと、俺以外の3人のこと、そして巫女のことも...。

彩で穴埋めをするつもりなどさらさら無いが、今の俺にとって大切な人になりつつあるのは事実だ。なにより自分のことを話せてこなっかったせいか、自分にとっての理解者ができたことは思っていたより大きい事だった。

この土日を使って、彩も優達と仲良くなっているようだ。特に陽介とは同じ学校ということもあり、盛り上がりすぎて入り込みずらかった時もあった。

もちろん、博士も帰ってきたし、5人で話し込んだ時はとても落ち着くものがあった。ただ、その時は外から見ると俺と彩と携帯のスピーカーで誰かが話しているように見えるため、少し変な目で見られた。

そんな感じで一変した環境の中で彩のこともいろいろわかってきた。

本名は黛 彩。一人称は私。学校は陽介と同じ皐月高校。彼氏はいないらしい。大人しい人柄ではあるがサバサバしている性格。背は俺より少し低めで160くらいか?どうやらとても運動神経がいいらしい。

そんな彼女と出会えてとても嬉しいがあの日彼女に怖い思いをさせてしまったことを後悔している。あれからあの勝とかいう奴らと目があっても絡まれないらしい。それだけがせめてもの救いだ。


本来はこんなことすることが正しい訳がないが俺にはやりたいことがあった。携帯に手を伸ばし、彼にメールを打った。


数分後、病室のドアが開き、1人の男がはいってきた。

「てめー、もし警察に言ったらあの黛ってやつただじゃおかないからな。で、俺様を呼び出して何の用だ?今更言い訳か?男が女々しいと嫌われるぜ?」

どうしてこいつにはセリフのセンスがないんだろう。

「いや、謝りたかっただけだよ。お二人の仲をどうこうしたい訳じゃなかったんだ。前のイヤホンの件も、悪かったと思ってる。本当に申し訳なかった」だんまりの彼がようやく口を開いた。

「おまえ...いい奴だな!てっきり俺を警察に突き出すかと思ってたけど、謝るだけのために呼んだのか?こっちこそ悪かった。俺もあの日イラついててよー、八つ当たりして悪かった...」


その後多くを語り合ったあと、彼は帰って行った。ジュースもおごってくれた。やはり彼はいい人だった。巫女が選んだ人だからきっとそうだと思ったていたが予想は大当たりだ。俺は新たな友人ができた。同時に巫女への思いを捨てざるをえなくなったわけだが...

わざわざ入院している今日に彼を呼び出したかというと、入院していればこちらが無抵抗ってことも理解しやすかったろうし、何より俺の中の奴がいろいろ言ってくるだろうし、博士も今日は休みだった。

博士が休みという表現を使うのもおかしいが彼も出てくる日というのが決まっている。規則は今のところ見つけてないが、出てこれない日がどうやらあるらしい。こうして、俺が巫女への気持ちを捨てることを彼らに知られることをなく自分で見切りをつけることができた。


今日は精神的に疲れた。身体を動かさなくても疲労は体を襲うのだ

そして今日を終える。

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