第13話

旅人の記憶/Friday


目が覚める。ここは病院らしい。監禁された後どうやら運び込まれたようだ。あそこから抜け出せたのはきっと優のおかげだろう。周りを見渡す。サブの携帯しか見つからない。俺の携帯どこに行った?3人に声をかけても返事がない。今日は繋がれないのか出てくる体力(精神力?)がないのかもしれない。それより俺の携帯を探さなければ...。考えていると病室のドアが開く。そこには黛さんが立っていた。

「徹さん。あの時はありがとうございました。お怪我大丈夫ですか?あの、これ...」

彼女の手には花と俺の携帯。あ、彼女が拾ってくれたんだ。

「俺の携帯なんてよく覚えてましたね」その時

「チャッチャラチャラララチャッチャ」と俺の携帯が鳴る。俺の設定していない音声が病室に響く。マナーモードにしておけば良かった。病院なのに...。こんな音を流す奴はあいつしかいない。携帯を耳に当てる。こっちが喋る前にでかい声。

「おぉ、今は徹か?体の調子はどうじゃ?だいぶ良くなったかのう?そうかそうか、元気そうでなりよりじゃ。それより徹。わしのことをあんな所に捨てよって。あのお嬢ちゃんが拾ってくれなかったらどうなっていたことか...」

どうやらこのクソジジイが黛さんに俺のことを全部喋ってしまったらしい。

この人は博士。自称超天才学者、そして俺のライフライン。つまりスポンサー。ここで彼の紹介をしておこう。

名前はよく覚えてない。ずっと博士って呼んでるからな。スポンサーで、俺の体を研究したいせいか基本俺のことを見張っている。なぜか俺1人を養いながら、4つの学校に入学させたりできるほどの莫大な蓄えがある。そして...陽介達のように実体がない。魂のような存在。彼らと違うのは、博士は乗り移る事ができる。ただし人に乗り移っているところは見たことない。毎回物や、機械。俺も良くわかっていないが、電気のような存在らしい。物に乗り移ってもその物自体に動く機能がない限り動けない。マイクがない限り音を聞くこともできないし、スピーカーがなければ音を出すこともできない。つまり、そんな状態で俺のことを見張るという点で携帯に憑くのが1番手っ取り早いようだ。ただし今回の場合のように俺が携帯を持っていかない限り彼はどうにもしようがないようだ。魂のみで動くにはどうやら限界があるらしい。

そんな彼をたまたま黛さんが拾ってくれたようだ。そしてその時に全てを打ち明けたのだ。彼が話してもいいと判断したならいいだろう。俺は彼と、多意識症を他言しないという条件で彼に養ってもらっているわけだ。

そんな感じで説明は終わり。

「あの博士から全部聞きました。私は間違えて話しかけてしまったんですね。そのせいで徹さん彼らに...」

いや違うのよ。

「いやいや、あなたのせいじゃありませんよ。もともと俺はあの人たちに目つけられてたんです。気にしないでください。」

「そうだったんですか。ならいいんですけど」

「あと一つ。」「え?」

「敬語やめません?俺たちが敬語使う理由なんてないから。」

「そう...で...だね!」

うん、意外な展開で特別な友が増えた。結果オーライ!

そうして携帯の中の博士に話しかける。

「博士、俺いつまでここに入院すんの?」

「そうじゃのう。水曜日まで診てもらっててくれ」

!!まだあと5日もかよ...

そのショックと体のだるさが手伝って眠気が体を襲う。そのままおやすみ状態に突入した。


p.m.5:00

目がさめる。カレンダーはまだ8日。

ふと見ると黛さんが俺のベットに頭を埋めて眠っている。彼女に余計な心配をかけてしまい、罪悪感がわく。

「徹。」陽介の声が頭に響く。

「俺たちの学校の奴らが...ごめん。それと...話しておきたいことがある。」


p.m.5:15

「そっか。それで携帯に巫女の写真が...」徹が呟く。俺が徹にあのことを言っていればなにか状況が変わっていたかもしれない。

「もういいんだ。俺もう巫女のことは諦めて忘れるから。」

え?そんなことする必要はないのに。

「その割っていう人も、翔っていう人も、巫女のこと思ってたからそういう行動をしたんだろう。彼ら2人はどうなるかはわからないけど、俺が彼らを邪魔する存在になるのは確かだから。もう俺からは巫女に連絡もとらないし話しかけもしないから。もう決めたことだし。いいよ。気にしなくて。」

まただ。また他人のことを考えすぎて自分の気持ちを抑え込んだ。でも徹に俺からなにか言うことはもうできなかった。


p.m5:30

黛さんを起こして返した後、俺は考えた。やはり、俺は巫女に関わり続けてもなにも彼女にとってと良いことはない。そもそも、この運命を背負ってしまった時点で恋愛をすることはできないのではないだろうか。別に彼らを恨むことは全然ない。でも、自由に恋愛くらいはしたかった。そんな気持ちをぶつける先もなく俺は眠りについた。

でも俺は気づいていなかった。俺だけではなく、優も陽介も豪も普通の人のように恋ができないことに...


第2章  

Un Luckyな運命


to be continue

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