第11話

旅人の記憶/Monday


「最寄りどこですか?送りますよ。少しなら時間ありますし」

たまたま帰りの方面が同じだったので駅までついていった。家を聞くと少し駅から歩くらしい。時間がないと言ってしまったが女性を1人夜道を歩かせるわけにはいかない。あまり大した会話は続かない。

彼女の家までの帰り道。並んで歩いていると後ろからなにか聞こえる。俺ら2人以外の足跡が。携帯のライトをつけ振り向くと見たことある3人組。筆頭の奴が睨んでいた。あー、巫女の彼氏だ。俺がそいつと目が合うのと向こうが走ってくるのが同時だった。

「走れ!」彼女の手をとり走る。ただ彼女は走るのが得意じゃないらしい。得意かもしれないが、ローファーじゃ走れないだろう。彼らも黛さんと陽介と同じ皐月高校。彼女とは接点があるからなんとも言えないが普通に考えて目的は俺だろう。彼女もちが黛さんをつける理由がすぐに思いつかない。彼女を先に走らせ後ろを確認する。体のでかいやつら。うーん。3人を倒して彼女を守りたいところだが生憎、こっちの中にいる奴の中でも俺の戦闘能力は最弱である。ここで使える戦法は...囮か...。

「黛さん!先に逃げてください。」

「え?でも」

「いいから!」

彼女が頷くのを確認して俺は足を止め、回れ右をしダメ元で1人にタックルをしてみる。カウンターも手伝って2人がひっくり返る。そう。2人。俺も綺麗に弾き飛ばされる。カタッ。なにかが落ちる音。ただ確認する余裕も明るさもない。起き上がろうとしたところを顔面を蹴られる。痛い。顔蹴るな!衝撃で倒れる。その時筆頭が叫ぶ。彼女に向かって叫ぶ。

「おい!待て!止まらなかったらおめーもただじゃすまねーぞ!」

彼女は走るのもやめる。そんな叫んだら警察来るぞ。彼女に歩み寄ろうとする筆頭を俺が止める。

「おい、彼女にはなにも見なかったことにして逃せばいいんじゃないのか?彼女をわざわざ巻き込む必要はないと思うぞ」

一か八かだ。彼女には指一本触れさせたくなかった。

「それもそうだな。お前誰にも言わないと誓うなら今日は目つぶってやる」

彼女が俺を見る。申し訳なさそうな表情で見てくる。笑顔で頷く俺。決断した彼女は走って行った。

一方の俺はよくわからない倉庫のようなところへ連れて行かれた。拘束バンドのようなもので手を縛られ座らされる。縛られるのは趣味じゃないなんて言ってられる暇もなく、監禁された。

「相模。おめー親いないんだろ?ってことは連絡する人もいないんだよな?今日はちょっと帰れないってなぁ」

ゲラゲラ笑う。センスのないセリフだ。三流ドラマでもそんなこと今時言わないぜ?そういえば俺はやっぱ相模扱いなのか。まあいいや。

「人のことを縛って監禁したってことは面白い話を聞かせてもらえるんだろうな?」

「それは俺たちのセリフだ。お前には聞きたいことが山ほどある。1週間前、巫女にプレゼントしたらしいな?

お前と巫女の接点がわからないが、どういう関係だ?プレゼントを渡すくらいの関係ってことはあれか?愛人みたいな関係とかだろ。まあ誕生日当日には俺と一緒にいたってことはお前なんて所詮遊びなんだろうけどよ」

どこぞで、その情報を得たかわからねーがなかなか刺さることを言ってきやがる。ただここで動揺したら負けな気がする。ここは黙っていよう。これ以上俺たちの関係は知られたくない。まあ実際のところ愛人なんて程遠く、お友達程度なのだが。そうこうしているうちに筆頭が俺のサブの携帯を漁ってやがった。まあ、うちの奴らは全員履歴を消去したがるはずだから特になにも...

「おいなんだこれは!」

奴が画面を見せてくる。そこにはなぜか巫女の写真が!

「おい答えろよ!」

待て待て。そんな写真知らない。答える間もなくまた蹴りが飛んでくる。頭に響く衝撃。視界が暗くなってくる。「おい、翔、こいつもっときつく縛っとけ。飲み物買ってくるわ。マス、ついてこい。」

手にまた拘束バンドが閉められる。その時だった。

「すまない」

小さい声で翔と呼ばれたやつが俺に言った。こいつには悪気はねーのか?だががそれ以上思考が回ることはなくその場に突っ伏した。

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