第10話

詐欺師の記憶/Wednesday


眩しい光で目覚める。そして視界に広がる景色の8割と言っても過言ではないほど白が目立った。身体中もなにやら白いもので巻きつけられている。これは包帯?事態がようやく飲み込めてきたがここは病院らしい。いつの間に徹の身体は入院するはめになってるんだ?痛みはするけど骨が折れてることはなさそうだ。落ちついたところでこの身になにがあったのか気になった。

たまたま通りかかる看護師。僕と目があい近づいてきた。

「お目覚めですか?先生を呼んできますね」

少したってやってくる先生らしき人物。身体の調子を聞かれたのでありのままを答えた。ここで嘘をつく必要はない。今度は僕からの質問。

「あの、よくわかってないんですけど僕はどういう経緯でここにいるんですか?」

「君は河川敷で倒れているところを通りかかった人が君を見つけて、救急車を呼んでくれたんだ。季節も季節だからね。見つけてもらえていなかったら凍傷になっていたかもしれないんだよ。」

それだけではなにが起きたのかわからない。ただこの医師になにを聞いても無駄であろう。お礼を言って、この人との会話を終わらせようとした時だ。医師が口を開く。

「君に会わせたい人がいるんだ。私の自己判断で勝手に呼んでしまったんだが、君のためのつもりだ。世話を焼きすぎかもしれないが。」

医師が出て行くのと同時に病室に入ってきた2人のスーツ姿の男性。2人の手に持っているものを見て驚く。警察手帳...。

「やあ。私は明智だ。彼女は弾鳥警部。別に隠し事はしなくていい。本当のことを話してくれればいい。君、その傷はどうしたんだい?誰かにやられたのかい?」

知らない。と言っても信じてくれるわけがなさそうだ。きっと傷を見て不良に絡まれたと思われ医師が呼んだのだろう。ならとりあえず、

「実は昨日、ずっと喧嘩してた友人と、ついつい殴り合いになってしまったんです。でもお互いわかりあって最後には仲直りしました。その帰りにどうやら疲れていてのかそのまま倒れてしまったみたいです。ご迷惑おかけしました。」

「本当かい?」

「はい」

「そうか、ならいいんだ。はやく治るといいな。また何かあったら連絡してくれよ。いつでも力になるからな」

と言って名刺を置いて帰ろうとした。どうせ来てもらったなら1つ頼み事をしておこう。「あの僕携帯をなくしてしまったんですが、探していただけませんか?」

実際、僕たち用の携帯が起きた時から見当たらない。看護師の人も知らないと言っていたから、どこかでなくしたのだろう。

「わかった。近辺の交番に届いてないか聞いておくよ。じゃあまたな」

と言って帰っていった。

そうこうしているうちにまだ本調子じゃない徹の身体が急に重くなってきた。僕はベットに身を任せ瞼を閉じた。

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