迷宮理論からの脱出
第15話 恐怖と天才
相変わらず砂ぼこりの立つ中にうっすらと見える基地。そこに近づくと、
〈自動操縦モードに切り替えます〉
という音声が入り、スピード、ステアリングの方向が細かく調整される。
大石は操縦桿を握っていた手をゆっくりと離し、背もたれに全身の力を預けた。
「ふ~このあとジェットコースターを過ぎればもう到着かあ」
「ジェットコースター・・・まあ言い得て妙だな」
ジェットコースター、と言うのはこの先、基地に入っていくときに急に狭いトンネルに入っていく通路のことだ。いくら自動操縦とはいえ、ほとんどの艦乗りに嫌われているようなスポットだ。
「うーわ、見えてきた」
大石はそう言うと目をつむった。深川はというと大石が目をつむったことを確認すると、こっそりと目を閉じた。
「なあ、深川、今どんな感じだ?」
大石が目をつむっているとは知らずに深川に尋ねる。
「まだまだにトンネルだ 緩いカーブだな」
確かにまだトンネルは続いていて、緩いカーブを通っているところだった。ここまで正確に答えられるのは恐ろしいことにトンネルに入ってから何秒の時にどういう道を通るか、ということをすっかり暗記しているからだった。
「あーもー早くこのトンネルどうにかならねえかなー」
「まあ、気分いいもんじゃないよな」
トンネルに入ってから17秒後、深川は目を開けた。
「トンネル、抜けたぞ」
左側に駅にあるようなプラットホームが見えてきた。降りるところが近づき、スピードが落ちていく。ちなみに艦はトンネルの途中でベルトコンベアのようなものに乗っていた。
「ん、ああ、そろそろ降りなきゃか」
そう言うとドアを開けた。
「っと」
「よっこらせ」
深川、大石の順番で艦から降りると自動的にドアが閉まりガレージへと持っていかれる。
「ふいー、戻ってきた!」
「2週間ぶりか?いや、もう少し経ったな・・・」
伸びをしていると、
「どうもお二人、はじめまして」
と後ろから声をかけられた。片方は50代か60代というところだろうか。それでも不思議と若々しさを持っている。もう片方は30代か40代。こちらも若々しさを持っている。
「あなたは・・・」
二人は答えを知りつつ、緩んでくる頬をそのままに尋ねた。
「ジャグラー・ベルと」
「グラス・ウェストです」
四人は満面の笑みを浮かべて、見つめあっていた。
そのうち、誰がなんと言うわけでもなく、基地のエントランスへと向かう通路に足を進めた。
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