第3話 ワープってなんだっけ
「そういえば燃料はどれくらいありますか?」
研究者であるベルに聞かれ、解析者である深川は少しキーボード叩くと、
「・・・あと3回ワープする分くらいです」
「・・・なるほど・・・」
それから少し静かになった。
少し居心地が悪く感じてきた頃、ベルが口を開いた。
「ここからの脱出のために極力電気は使わないようにお願いします 上手くすれば我々だけでも・・・」
「了解しました」
深川はそう言うと大石に視線を送り、大石は艦の設定の変更をしていく。まさに阿吽の呼吸。
「・・・それでもあまり長く持ちませんね どう長く見積もっても三週間くらいしか・・・」
「やはり、ですか・・・ 我々も昨日・・・いや、そもそもこの感覚がどれ程当てになるか分かりませんが、ほぼ昨日こちらの世界に来ましたが燃料も食料も二週間分ほどしかありません 極力セーブしていかないと・・・」
設定を終えると、大石がベルに向かって質問を投げ掛けた。
「で・・・この原因って?」
敬語の使えない方の雑な質問にもベルは全く気を悪くしていないように応じる。
「ええ、お話しします 少し話が長く分かりにくい話ですが・・・」
そう言うとまずワープの基本原理を話し出した。もっとも、まだまだ解明されきっていないところも多く、仮説の段階のものが多い。そして意味不明な単語が多く(敬語が使えない方は当然、ほとんどが理解できなかった)、九割方意味が分からないのが当然の状況なので至極簡単にしたものを深川がまとめていた。(そしてそれを大石に見せていた)
・ワープ前に前方に小さなブラックホールを作り出す
・その結果一気に加速しブラックホールへ
・一度、人類が暮らすこの宇宙ではない別の空間(未解明)へ
・ワープ先にあるビーコン(無人機により設置済み)と艦に搭載しているビーコンを磁石のN極とS極のようにする。
・(気づいたら)ワープ先へ
「・・・・・・お、おーう・・・つまりどういうことだ?」
「なんかすげえな、ってお前は思っとけ」
「んだそのくそ雑な教え方は!懇切丁寧に教えろ!」
「おお、よく懇切丁寧なんて出てきたな えらいえらい」
「・・・やかましいわ!それくらい知ってるに決まってんだろ!」
「ははっ」
ベル、そしてその助手のウェストから笑いが聞こえてくる。二人は恥ずかしくなり、小声で「おい!」だの「お前!」だのと言って言わばじゃれあいをしていた。
「いやいや、お会いできたのがお二人で良かった」
二人は恥ずかしいやら嬉しいやらで顔が微妙な具合になっている。
「・・・そして、話を戻しまして、お次はこの今我々がいる世界について、仮説をご披露しましょう」
大層な口振りになったベルは、この世界について語り出す。
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