第2話 この世界は
「計器が故障したのか?いや・・・」
「周りの大気成分を調査したが値は全て0だ 普通僅かに検出されるはずなのに・・・」
「それどころか周りに星明かりが全く見えない・・・」
操縦者、解析者共にこの世界に違和感を覚えている。
「おれは近くに艦が居ないか呼び掛けてみる!お前はワープの瞬間の状況を調べてくれ!」
操縦者の素早い指示に解析者がまた驚きつつ、調査を始める。
艦内にはキーボードを叩く音と、僅かな機械音、そして二人の呼吸音だけが響いていた。
〈緊急外線に連絡あり 通話許可を出しますか?〉
静かな艦内に突如としてアナウンスが流れる。二人は顔を見合わせ、頷き合うと操縦者はタッチパネルを操作し、許可を出した。
〈許可を確認 スピーカーモードでの通話を開始します〉
「Hello!」
相手が外国人であると分かり、もう一度タッチパネルを操作して翻訳を入れる。
「皆様、始めまして 我々は宇宙工学を研究している者です 私はジャグラー・ベルと申します そしてこちらが助手の」
「グラス・ウェストです」
「始めまして 我々は探検家の大石始(おおいしはじめ)です こっちが解析者の」
「深川昴(ふかがわすばる)です 大石は操縦者です」
操縦者、もとい大石と、解析者、もとい深川は名乗り終えると、周りを見渡した。が、周囲に艦は見えない。
「あの・・・どちらにいらっしゃるんですか?」
深川が代表して聞いた。ちなみに深川は敬語が使える奴、大石は敬語が怪しい奴と覚えて頂ければ全く間違いが無い。
敬語が使える奴の問いにベルは、
「あなた方と同じ空間ではあると思います ただ全く目印も無いので場所はお伝えできませんが・・・」
この言葉に敬語が使えない方は深川に顔を向けた。そしてパソコンの方を少し見ると、浅く頷いた。
深川は極力静かに、音が相手に届かないようにキーボードを叩く。
二人は相手を信用するかどうかを検討していた。そのため、深川がデータベースで検索を行い、大石が相手と話をし、相手にそれを悟られないようにしている。
数秒後、深川は大石を見やり首を横に振った。問題なし、という意味だ。
「調査は、終わりましたか?」
「ははは・・・ばれましたか お恥ずかしい」
敬語が使える方は動揺を見せずに返す。敬語が使えない方はただひたすらに動揺をしていた。
「では・・・宇宙工学を、と言っていらっしゃいましたが今の状況の原因を解明していらっしゃいますか?」
「まだ仮説の段階ではありますが・・・原因のようなものは」
彼らは少しずつ、動き出した。
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