脱出ゲームin宇宙

34

謎空間からの脱出

第1話 出発

大きな窓ガラスには最新ニュースが並んでいる。


「超巨大ブラックホール発見」


「新素材によりブースター長寿命化」


「ワープ最長距離ギネス更新!」


「今更聞けないワープの仕組み」


歩くスピードにあわせて文字がついてくる。その文字の向こう、つまりこの建物の外では砂埃が舞っている。そんなガラス張りの廊下を同級生である2人は歩く。


「今日行くのは昨日言ったあの星でいいよな?」


「ん、ああ、あそこなら生命体がいてもおかしくない 見つければおれ等もこのニュースに載れるかもな」


「そんな最高なこと、平坦に言うなよな! 感情をむき出しにしろよ!」


「周りの人が見ているなかでか?」


「それでもいいんだよ! 人としての暑さを感じて艦隊を組む・・・とかあるかもだろ!」


「そんな艦隊だったらすぐさま抜けたいな」


「全く、口が減らねえなあ」


「そりゃ、ありがとう」


「誉めてねえよ!お、おれらの番だぞ」


並んでいた列の前が空いた。


「乗車したら速やかに離陸準備をお願いします」


と言う職員の事務的な言葉を聞くが早いか、二人は前に歩き始めた。


彼らの艦がゆっくりの左から右へと流れてくる。ロックを解除し、流れたままドアを開け乗り込む。


一人は椅子に座るとボタンを押し、ブースターを起動させる。


もう一人はパソコンを全て起動し、データの入力を始める。


最初に椅子に座った方、―操縦者―は、もう一人―解析者―が椅子に座ったのを見ると、タッチパネルを操作する。


〈自動操縦モードに移行します 目標高度500キロメートル その後は操縦権を返還します〉


音声が流れるとゆっくりと動き出す。


〈重力軽減開始 着席をお願いします〉


「もう座ってんぞー」


と言う操縦者の声に、解析者は呆れを露にした。最もそれはいつものことであったし、操縦者は前を、解析者は左側を向いて座っていたので解析者の表情が操縦者に伝わることは無かった。


建物から出るハッチが開き、景色の流れるスピードが早くなっていく、と思う時には、砂の舞う外の世界に出てきた。


そのまま宇宙空間に向けて進んでいく。途中で前方を艦が横切っていった。


〈高度500キロメートル到達 操縦権を返還します〉


「よっしゃ、行くぞ!」


操縦者はペダルを踏み込み景色を暗くしていく。


〈ワープ許可エリア到達〉


というアナウンスが入る。


「やっていいか?」


「おう、問題なしだ 座標も送った」


「りょーかい んじゃ行くぞ!」


そう言うとタッチパネルの「ワープ」というボタンを押す。座標をペーストし、スタートの準備に入った。


〈約10秒後にワープします〉


というアナウンスが入り、自動的に加速していく。


二人が異変を感じたのはワープ後のアナウンスからだった。


〈ワープ完了 誤差情報取得不可〉


「不可・・・?」


「なんだそりゃ?」


「悪いが計器を確認してくれ」


と操縦者が解析者に指示を飛ばす。


「あ、ああ」


僅かな驚きを見せつつ、確認をとる。


「・・・観測値、エラー?」


これが、宇宙探検史に残る大事件の始まりと分かるのは、あともう少し先の話。

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