第2話 夢の話

宿主「おはようございます。旅人さん。」


旅人「おはようございます。」


宿主「今日は快晴で気持ちいいですよ。」


旅人「そうですね。私も先程カーテンを開け

てみていい天気だなと思いました。」


宿主「洗濯がいい感じに乾きそうです。」


旅人「確かに。」


宿主「そういえば、昨夜はどんな夢を見まし

たか?」


旅人「えっ?夢ですか?」


宿主「ええ。巡回で部屋の前を通った時に“う

ぉー”という寝言が聞こえたもので。」


旅人「あ〜、あまり良い夢ではありませんで

したね。高い所から落ちる夢でしたか

らその時の声だったのかもしれませ

ん。」


宿主「そうですか。それはそれは。」


旅人「そんな気になるほどの呻き声でした

か?」


宿主「いえいえ。呻き声に関わらず質問はし

ていましたよ。」


旅人「えっ、なぜですか?」


宿主「それはですね。この国では夢の中であ

ろうと人殺しは罪になるからです。だ

からこの国では毎朝起きて“おはよ

う”の後は“昨夜はどんな夢を見た?”と

聞きます。」


旅人「なるほど、夢の中でも罪にねぇ。しか

し気になりますね。」


宿主「何がでしょうか?」


旅人「その夢の話が本当かどうかどうやって

見分けるんですか?」


宿主「それは簡単ですよ。」


旅人「それは?」


宿主「“本当の事を言ってますか?”と確認す

ればいいじゃないですか。」


旅人「いや、それはそうですがその人が嘘を

言ってるかもしれないじゃかいです

か。」


宿主「いえ、それはありません。」


旅人「えっ?なぜ言い切れるんですか?」


宿主「この国の人々は正直者だからです

よ。」


旅人「正直者?」


宿主「そうです。正直者が見てない夢を見た

と言いますか?言わないですよ。正直

者が見た夢を見てないと言いますか?

それも言わないです。正直者とはそう

いう事です。」


旅人「まぁ基本はそうでしょうけど、けども

し仮に人を殺す夢を見た人がいて、そ

の罪から逃れるために嘘をつくかもし

れないじゃないですか?」


宿主「いえ、それはありえません。」


旅人「なぜですか?」


宿主「この国の人は正直者ですから。」


旅人(ダメだこりゃ。話にならないよ。まぁ

よその国の事だしほっておこう。)


旅人「なるほど。そうですか。さぞかし正直

者の国なんでしょうね。」


宿主「はい。そうです。…しかし、もし嘘を

言ってる人がいるとしたらですが…」


旅人「…いるとしたら?…」






宿主「あなたのような旅人ですかね。」


次の瞬間旅人の視界が暗くなった。


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