異世界風景100選

第1話

目の前には雪原が広がっていた。辺り一面雪原でチラホラと雪も降っている。俺は言葉を失っていた、これがただの雪原だったら綺麗な景色だなぁと思うだけで言葉を失うほどではないだろう。しかし俺の目には前の世界では考えられない光景が広がっていた。降ってくる雪も積もってる雪も終いには空に浮かぶ雲でさえコバルトブルーの色をしていたからだ。

少し見入っていただろうか俺はその美しい景色を目を閉じてもう一度開きこれは現実だと認識してつい独り言をつぶやいた。


「本当にあるなんて」


一種の間の後に


「もう地球の景色を見れないのは残念だと思ってたけど異世界の景色も捨てたもんじゃないな。あー写真に収めたいなー」


もう見れない地球の雪景色を想像しながら目の前の雪景色をみて地球の景色への感傷と見たことのない景色に心を奪われながらその雪原をしばらく眺めていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーー





俺、佐伯雄二はフォトグラファーだった。

写真が好きで地球のあらゆる景色、陸海空様々な場所で写真を撮っていた。それに加えて自ら誰の見たことのない秘境や動物を探し出すという冒険家の1面も兼ねていたこともあり周りと比べると異質なフォトグラファーだったと思う。


今日もいつもの様にまだ見つかっていない秘境を探し出すため海外の山奥に来ていた。


「山を抜けたと思ったら今度は崖かよ

結構深そうだしどうやって渡ろうか」


う〜ん、と周りになんらかの方法がないか誰が見ても分かりやすく雄二悩んでいると


「あっ?!うわぁーーーーー」


渡る方法を考えるのに夢中になっていた雄二はいつのまにか崖縁に近づきすぎて崖縁の脆い地面が雄二の体重に耐えられず崩れると共に雄二も太陽の光があっても下が見えない崖の奈落へと真っ逆さまに落ちて行った。





どのくらい落ちただろうか左手の腕時計でわかるのは落下してからもう30分ほど経つということ。雄二も冒険が好きな以外は普通の人間なので最初の10分ほどは悲鳴を上げ続けていたがいつまで経っても地面が見えてこないことに違和感を覚え瞑っていた目をいざ開くと絶賛落下中だというのは体感的に理解できるがもう太陽の光も見えない暗闇の中でいつ地面に衝突するかという恐怖心で心がいっぱいだった。しかし

落ち続けていると理解してからはや20分、人間恐怖もずっと味わい続けると慣れるもので落下にも恐怖にも慣れてきた雄二は冒険の時いつも持参する情報端末で位置情報を調べようとしていた。


「あれ?なんで何も表示されないんだ?

もしかして壊れた?いやでも壊れる様なことはしてないしなぁー」


と喋る相手もいないので独り言をぼやいていると落下先に小さい光が見えた。


「うわ、もしかして地面か、でもなんで光なんて

あー恐怖心も薄まったと思ったけどやっぱ衝突を意識すると怖くなってきたな」


恐怖心からまた悲鳴をあげそうになる自分がいる中、唇を噛み締めながらこれから衝突するという現実を認識しようとする。この際衝突するであろう地面が光っているなど疑問にならなかったのだろう


だが、認識する間もなく雄二は光に一直線で落下して行った。


「あれ?!」


確かに衝突したはずなんでまだ落下の感覚が消えないんだ?


落下後2度目の違和感がある中眩しさを感じ恐怖の中目を開くと


「っ!!」


声にならない驚きがあった。それもそのはず眼下には見渡す限り緑が生い茂った山 山 山


「はぁー?!俺崖から落ちたのになんでスカイダイビングなんてしてんのー?」


あからさまに驚くのも無理はないさっきまでは暗闇で見えないこその恐怖もあったが逆にずっと落ちている違和感の方が勝っていた。しかし今は違うしっかりと地面を目視で確認できるということは地面に衝突するとしっかり認識できる訳で


「うわぁーーーー

どうしよこのままじゃ死ぬいや本当に洒落になってない、クソーふざけんなー」


崖から落ちだした時の様に慌てるが慌てている今も自由落下は止まらない。引力に引かれ加速を続けとてつもない速度で地面との距離が縮まっていく、


「あ、もうこれダメだ」


諦めの言葉が口からこぼれ生きる意志を放棄する。


「せめて世紀の大発見とかしてみたかった」


その言葉を発した数秒後


雄二の意識は途絶えた



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「おい、オリン山の火山湖に何か落ちてきたぞ」


「今のすごい音はそういうこと?」


「あぁ、俺は少し山の様子を見てくる

今のやつで火山活動や環境に影響が出るかもしれない」


「気をつけて行ってね」


「当たり前だ、行ってくる」


足早に準備を整え1人の男性が落下地点の確認に向かう


オリン山は数十年前までは活発に火山活動がしていたが今では平和なもので火山後の地熱の影響もあり山周辺は豊かな環境を築いていた。山の活動が終わった後は山頂に火山湖まで出来て緑と水の豊かな資源があるため山の近くにはいくつも村が建っている。その環境が崩れれば争いの種が芽を吹くだろうことを村民である男性は危惧していた。


山を登り山頂に着いた男は落下物が落ちてないか周りを見渡す。


「ん?」


普段は水が一面に張って、風でも吹いてない限り水面が荒れることもなく空が反射している。だが男が見たときは無風なのにも関わらず湖の水面が多少荒れており加えてなにかが浮かんでいた



「あれはなんだ?」


男が改めてよくその物体を見てみるとかろうじて人であることがわかった。


「なんで、あんなところに人が浮かんでんだよっ!」


男は慌てて湖に飛び込み救助しに行った。


「よし、一様生きてるな」


浮かんでいた男の状態を見て重症だが生きていることを確認しなんとか抱えたまま岸まで泳いで岸に到着すると服が濡れたまま浮かんでいた男を担ぎ大急ぎで村まで戻った。








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