エピローグ

私は、砂山里美

もうじき20歳になる。


私は、海外で生まれたいわゆる帰国子女。

帰国した理由は、両親が他界したため。


帰国した私を待っていたのは、親戚中をたらいまわしにされるという、

悲惨な生活。


そして、いつしかぐれるようになり、スリや万引きなど、いじめ以外は何でもやった。

完全に、ぐれていた。


そして、いつしか親戚も、どこも面倒見てくれなくなった。


途方に暮れていた私は、ある方のイラストの展覧会に行った。

正直、上手いとは言えなかった。


でも、とても素直でピュアな絵で、私の心は射抜かれた。

そして、この作者の方に会ってみたくなった。


そして、スタジオを尋ねて、住み込みで働かせてもらうように頼んだ。

その人は、快く承諾してくれた。


それから、先生との生活が始まった。


最初は、生きていくためだったが、私はその人の人間性に、いつしか惹かれていた。

歳は、私よりも15歳も上。

でも、年齢を感じさせない、素朴さがあった。


描く絵と同じように、とても素直でピュアな方だった。


そのために、私はしびれを切らして、自分からプロポーズした。

その人は、戸惑っていたが、もう押し掛け女房だった。


そして、ご両親にも会わせていただき、私の事を知りながら、

「過去は関係ないから」と、受け入れてくれた。


お義母さんは、とても寡黙だけど、優しくて料理を教えてくれた。

特に漬物の作り方を教えてくれた時は、涙が止まらなかった。


お義父さんは、気さくで、よくお話をしてくれた。


でも、先生はいかんせん素直過ぎて、なかなか心を開いてくれない。

先生は、「むかしからだから」としか、言わなかった。


いつしか、先生に頼まれて、くん付けタメ口で話すようになった。

私を奥さんとして、認めてくれたと理解できた。


そして、結ばれた。


でも、今の先生は素直すぎた。

私もまだ、とげがある。


お義父さんと、お義母さんに相談したら、

過去に戻って昔の先生と、共同生活するように、提案された。


私は、承諾した。


そして、タイムマシンをレンタルした。

科学の進歩は、予想以上だった。


まず高校時代の先生の、ご両親に会い、接点を持った。

当たり前だが、最初は信じてくれない。


でも、ウソをついている眼ではない。

そして、我が家に代々伝わる漬物の作り方を知っている。


信じてもらえた。


そして何よりの決めてが未来の写真と、

私の時代の、お義父さんと、お義母さんからの、

直筆と声のメッセージ。


筆跡鑑定と、声紋分析が一致した。


先生のご両親は、この時代でも私が過ごしやすいようにと、

いろいろと準備をしてくれた。


ありがたかった。


そして、この時代の先生・・・高校生の高山基くんに、ハガキを書いた。

怪しまれないように、その辺のポストに投函した。


この時代のハガキ代は、62円と安かった。


ハガキにはこう書いた。


「背景


高山基くん


始めました。

突然の事ですが、私は君の婚約者です。


いたずらでも、ドッキリでもありません。

先日、君のご両親が、正式に決めました。


近日中に伺います。


かしこ


砂山里美」


未来からとは伏せた。

絶対に、信じてくれなくなるので・・・


でも、その必要はなかったみたい。


私は、基くんを見て思った。

間違いなく、私が愛している先生、基くんだ。

彼が、そこにいるんだ。


そして、改めて誓った。


「私を、そして、この人を、絶対に変えてみせる」と・・・

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フィアンセ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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