第48話 もう逃げない

そろそろ、3学期が始まる頃だ。

今、僕は休学という形になっている。


両親からは、復学が退学を選択された。

僕は、迷わず前者を選択した。


何故かこのまま退学する事に、里美との生活を否定することになると思った。

両親は、何も言わずに手続きをしてくれた。


もちろん、僕も同伴だが・・・


それと同時に、両親は仕事へと戻る。

家事は、里美がしてくれる事になった。

「好きでやってるから」と、いつものように言うが、やはり申し訳ない。


復学した学校は、やはり授業にはついて行けない。

これは、留年確定だな。


でもそれを、悪いとは思わなかった。

むしろ、退学に逃げを感じた。


最初は戸惑っていたが、先生やクラスメイトたちも、僕を受け入れてくれた。

凄く、感謝している。


家に帰れば、里美が出迎えてくれる。

出かける時は、見送ってくれる。


それが、嬉しかった。


里美は、僕が学校に行っている間に、何をしているのかは知らない。

でも、見当はついていた。


おそらく、未来へ帰るための準備をしているのだろう。


「過去にいる間は、体は成長しない」

里美は、そう言っていたが、その体には、新たな生命が宿っている。


僕の血を受け継いだ、新たな命が・・・


「男なら拓真、女なら瀬梨」

僕はそう命名した。


未来の僕も、同じ考えのようだった。


そして、里美の帰る日が、里美自身の口から告げられた。

約束通り、その日を知らせてくれた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る