第46話 約束だよ

自分の子か・・・

考えた事もなかったな・・・


結婚なんて、僕には無縁と思っていたし、ありえないと思っていた。

しかし、未来のお嫁さんとなのる女子が、目の前にいる。


いつどうやって出会ったかは、少し前に聞いた。

ようやく馴れ初めを教えてくれた。

ありがたい・・・ということにしておこう・・・


「基くん」

「何?」

「いいかな・・・」

「うん」


最近、神妙な顔つきをする事が多くなった里美・・・

そろそろの時が近づいてきているのか?


確かに、居心地はいい。

しかし、それに満足していては、成長はない。


そろそろ二人三脚の、帯をほどく時なのかもしれない。

でも・・・

出来るなら、もう少しこのままで・・・


「基くんも、自覚していると思うけど・・・」

「うん」

「私と君とは、二人三脚で来た」

「うん」

「君がいなければ、私はいなかったし、私がいなければ、君はいなかった・・・」

「うん」

「でも・・・ね・・・」

言わんとしている事は、わかった。


「以前の君は、周りをみていなかった。前後左右どこも・・・」

「ああ」

「でも、今の君は前を向いている。それはもう、成長した証」

確かに、前を向いているような気もする。


「これから先も、何かとあると思う。でも、ひとつだけ約束して・・・」

「何?」

「間違っても、下だけは見ないでね。立ち止まってもいい、振り返ってもいい。

でも、下だけは・・・ね」

僕は、頷くしかなかった。

でもそれは、落胆ではなく、成長の証として・・・


「うん、約束する。下だけは見ないよ」

「はい指切り」

「うん」

差し出された、小指をからませた。


そして、季節は冬へと入る・・・

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