第45話 変わらないと行けない物、変わると行けない物

先日、温泉に行った時、里美の話では、未来で僕は、イラストレーターになっているらしい。

売れる売れないはともかく、アシスタントを雇えるほどだから、それなりにはあるだろう。


最も、裏があるのかもしれないが・・・


どういう経緯でなったのかは知らないが、それは、自分で見つけた方がいいだろう。

自分の道だ・・・

いつまでも、第3者にレールを敷いてもらってはいけない。


「基くん、いい?」

「何?」

「私が君に出した手紙、覚えている?」

「うん、僕が破り捨てた・・・って、まだ怒ってる?」

「それはいいよ。もう内容は、わかっていると思うし」

確かに見当がつく。


「でね、基くん」

「うん」

「実は、私のお腹には、赤ちゃんがいるの・・・」


時間が止まった・・・


「赤ちゃん?」

「うん、私と未来の君のね・・・また、小さいけど・・・」

そういって、里美はお腹をさする。


完全に、母親の眼だ・・・


「でも、ここへ来て。随分経つけど・・・」

「うん、確かにね。でも、私は本来は、この時代にはこの歳では存在しないから」

「うん」

「だから、心は成長できても、体は未来を出てきた時のまんまだよ」

もしかして、出来ちゃった婚が?いくらなんでも・・・


「違うよ」

「えっ?」

「私と君が、婚約した後だから、できちゃった婚にはならないよ」

「そうなの?」

「うん」

「でも、どうして?」

里美は、優しげな表情で言う。


「君が、つまり未来の君が煮え切らないから、子供が出来れば、覚悟すると思ったの。

だから、私からリードしたんだ」

「そうなの・・・」

草食系なんだな・・・相変わらず・・・


「でもね・・・あまり変わらないから・・・」

「悪かったな」

「ううん、だから来たの。子供が生まれる前に、少しでも、君を変えておこうとね。

もちろん、私も・・・」

そうなのか・・・だから、子供の事を話していたのか・・・


「体は、大丈夫なの?」

「うん、その点は平気。詳しくは言えないけどね・・・」

「そっか・・・」

「ごめんね。しんみりして・・・」

「いいよ。ありがと」

里美は、笑顔で頷いた。


「でね、お願があるんだけど」

「何?」

「・・・名前、付けてくれる?」

「えっ、今?」

「うん、お願い」

僕は、少し考えて答えた。


「男なら、拓真。たくましく育つように」

「うん、女の子なら?」

「瀬梨。競り勝つように」

里美はそれを聞いて、嬉しそうな顔をした。


「同じだよ」

「えっ」

「未来の君も、全く同じ事を言ってた」

「そう・・・」


「そこが、基くんのいいところ、そこだけは、無くさないでね」

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