第44話 持ちつ持たれつ

「永眠させるよ」

最初の頃、よく里美に言われていたセリフだ。


でも、最近は聞いてない。

里美にも、変化があったのか?


朝食を終え、外に出る。

育てているさつまいもを、取り出してみる。


「そろそろいいか?もう少し、寝かしておくか?」

「いいと思うよ」

里美から、声をかけられる。


「里美?」

「うん、収穫しよう。

「わかった」

「私も手伝うね」

「いいの?」

「うん、やろう」


こうして、2人でさつまいもを収穫した。


2人でやると、とても早く片付く。

この時も、いろいろな会話をした。


日の光、会話、運動・・・

健康に大切なものを、僕は忘れていた。


「ふう、たくさんとれたね。基くん」

「うん、こんなに取れるとは思わなかった」

「素人だもんね」

「ほっとけ」

「でも、よくがんばったね。いい子いい子」

頭を撫でなれる。


「で、このさつまいもどうするの?」

「ご近所に配るよ」

「今から?」

「うん、善は急げだよ。」

こうして、さつまいもを配る事になった。


もちろん、自宅用に残して・・・


さつまいもをリアカーに乗せて、

(いつ用意したのかは、知らない)

ご近所、というか、さつまいもを、配って回った。

皆さん、快く受け取ってくれた。


変わりに、野菜などをもらう。


最初はぎこちなかった僕も、今では前よりは、話せるようになった。

まあ、里美のおかげだが・・・


「それは、私もだよ、基くん」

「えっ」

里美は、笑うだけだった。


こうして、さつまいもを配り終えた。

もちろん、変わりに頂いたもので、荷物は一杯。


当然、運ぶのは僕だが、リアカーなので、苦にならない。

ただ、軽い物は里美にもってもらった。


「基くん、力ついたね」

「そう」

「前は、ひょろっとしてたもん」

「自分でも、そう思う」


「基くん、今日はご馳走だからね」

「ありがと」


その日の食事は、いつもよりも多かった。

以前なら、食べきれなかったが、今では胃袋が大きくなった。


未来の僕よ、見ているか?




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