第42話 お参り

眼が覚める。

ここは、どこだ?


周りに園児たちが寝ている・・・


理解するのに時間がかかる・・・

あっ、そうか・・・

お泊まり保育だったんだ・・・


「基くん、お早う」

「・・・お早う・・・里美は、元気だね・・・」

「私のいい所だからね」

「ねえ、朝食前に散歩に行こうか?」

「うん・・・」

顔を洗って、里美と散歩に出かける。


ちなみに、ジャージ姿・・・

恥ずかしくない姿・・・

まあ、この辺りは部屋着でもいいんだが・・・


「今日も天気だね」

「うん、少し肌寒いかな」

「平気?」

「うん、大丈夫だよ、里美は?」

「平気」


2人して歩く。


そういえば、時間の感覚が無くなってきてるな・・・

こちらに来てから、規則正しくなっているのだが、不思議だ・・・


都会にいたころは、夏はエアコン無しでは、乗り切れなかったが、

今年の夏は、使った記憶がない。

もっとも、エアコン自体無い事もあるが、欲しいと思わなかった。


僕は、進化しているのか?

まさかね・・・


「ねえ、基くん」

「何?」

「もしもだけど・・・」

「私が、『今日帰る』って、言ったらどうする?」

「引きとめる」

「即答だね。どうして?」

「さあな・・・」

「うふ、でも、ありがとう」

「えっ?」

「私も、まだ居たいから・・・」

里美の顔は、少し小悪魔ぽく見えた。


「あっ、あそこに鳥居があるね」

「ああ、隼人神社だね」

「隼人神社?」

「うん、八百万の神様を祭っているらしいよ」

「賑わうの?」

「普段から、子供の遊び場になっているからね」

「拝んでいこうか?」

「えっ」

答える間もなく、里美は僕の手首を掴む。


何だか、欲しい物を見つけた子供のようだ。


鳥居をくぐると、すぐ前に本殿がある。

それほど大きくはないが、後利益はあるようだ。


賽銭箱に、1円という昔なら大金を入れる。

「えーと、参拝の仕方は?」

「二礼二拍手一礼よ、基くん」

「そっか・・」


二拍手した後、2人で願い事を言う。


「里美は、何を願ったの?」

「内緒、基くんは?もしかして、私の事?」

「半分正解」

「じゃあ、何?」

「心願成就」

「何で?」

不思議そうにこちらを見る里美。


「これひとつで、全て賄える」

「大雑把だね」


(また一歩、前進だよ、基くん)


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