第41話 お泊り保育

お泊まり保育。

園児が幼稚園や保育園に泊まり、

友達や先生と、一晩過ごすこと。


僕はやった記憶がない。

まあ、忘れているのだと思うが・・・


「みんな、今日はお兄ちゃんとお姉ちゃんも、来てくれましたよ。

仲良くしましょうね」

先生の声に、子供たちは、元気よく、

「ハーイ」と返事をする。


すっかり、馴染んでしまったようだ・・・


「今夜は、お泊まり保育らしく・・・」

僕は、カレーを作ると思ったが・・・


「鍋を作りましょう」

思わずこけかけた。

「この時期に鍋ですか?先生」

「だって、作るの簡単ですし、大勢さばけます」

手を抜かないで下さい。

先生・・・


「基くん、手伝って」

「何を?里美」

「鍋を出して、食器を並べて、子供たちを集めて・・・」

「へいへい」

「嫌?」

「やらせてください」

「よろしい」

里美は、笑う。


(基くん、君は確実に変わってきてるよ。

私と、冗談を言い合えるようになったんだから・・・)


里美の声は、相変わらず耳には届かない。

でも・・・何となくわかった・・・


「で、里美、何鍋にするの?」

「水炊きだよ」

「水炊き?」

「うん、子供にはキムチは、辛いし体に良くない」

「すき焼きは?」

「ウィンナーを入れられない」

それですか?里美さん・・・


鍋をいくつか用意して、ぐつぐつ煮込む。


「肉は何?里美」

「鶏肉だよ」

「その心は?」

「手に土がつかないように・・・」

お相撲さんじゃ、ないんだから・・・


「野菜もたくさん用意して」

「子供たべるかな、里美」

「基くん、この村には野菜嫌いな子はいないよ」

「あっ、そういえば・・・」


でも、お泊まり保育の時期は違うような・・・

まっ、いいか・・・


子供たちは元気の塊だ。

寝かしてくれなかった・・・

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