第38話 再会

列車は走る。

かたこと走る。

里美曰く、「田舎は特急より、鈍行」だそうだ。


キハ58だったか・・・

鈍行なのか?

今度調べておこう。


「元は、急行用だよ」

「何が?」

「この列車」

心を読まれている。


「で、どこへ行くの、里美」

「温泉だよ」

「温泉?」

「ある人たちが、待っているから」

ある人たちか、嫌な予感しかしない。


2時間ほどして、目的の駅に着いたらしい。

いつの間にか眠っていて、里美に起こされた。


「さてと、基くんにご紹介します」

そこには、僕の両親がいた。


「基、元気そうだな」

父さんに、声をかけられる。

母さんは、相変わらず寡黙だ。


「うん、まあね」

「少し、たくましくなったな」

「そうかな・・・」

「ああ」


父さんと、母さんは、里美に挨拶をする。

といっても、話すのは父さんが主だが・・・


「里美さん、基がお世話になっています」

「いえ、とんでもないです。お義父さん、お義母さん」

やはり、僕よりも前に会っていたか・・・


「基、秘密にしていてすまんな」

「いや、勘づいてたよ」

「そっか・・・」

父さんに、里美について聞かされる。


里美は、母さんと話をしている。

といっても、里美は主で。、母さんは相槌を打つ程度だが・・・


母さんは、世にはびこっている、噂好きでゴシップ好きな、おしゃべりおばさんではない。

たちの悪い冗談など、決して言わない。


その点は、里美とは正反対。

でも、母さんは世話好きなので、その点は一致しているようだ。


母さんは、怒ると、暴力をふるったり、暴言を吐いたリはしない。

しかし、異様なまでの、まがまがしい妖気で威圧してくる。

なので、ある意味では、とても怖い。


「里美さんの事は、母さんに任せておこう」

「うん」

父さんが、真剣な顔つきになる。


「実はだな・・・里美さんは・・・」

「未来の、僕のお嫁さんだよね」

「さすがにそれは、聞いているか・・・」

「うん、僕を変えるためと・・・」

「驚いたろ?」

「まあね・・・」

父さんが、さらに続ける。


「これは、冗談でもドッキリでもない。本当の話だ」

「にわかには、信じがたいが・・・」

「無理もないだろう。父さんたちもそうだった。」

「何て言われたの?」

確認のために、訊いてみる。


≪基くんを、変えてみます≫


「同じだね、僕と・・・」

「ああ、最初はたちのわるい冗談かと思った」

「なら、どうして信じたの?」

「目だ」

「目?」

「ああ、冗談を言っている目ではなかった」

それだけですか?父さん、母さん。


「もちろん、それだけではない」

「えっ?」

「決定的だったのは?」

「うん」

「里美さんが、我が家に伝わる、漬物の味や作り方を、知りつくしていた事だ」

「漬物?」

「漬物は、本来はその家庭に、受け継がれていくもの。他人には教えない」

里美の料理の味が、母さんに似ている。

その為か・・・


「後・・・」

「後・・・何、父さん」

「いや、これはいいだろうう・・・」

気になるが、訊かない方が吉だろう。


「でな、未来のお前だが・・・」

「うん」

「里美さんの話だと、都会にいたときのままで、殻に閉じこもっていたようだ」

「なら、なんで僕に惚れたの?」

そこが、気になる。


「素直さだ」

「素直?」

「お前はとても素直な性格だ。どちらかというと反抗的な里美さんには、

魅力的に見えたんだろう」

わからないものだ。


「で、かけてみる事にしたんだ。里美さんに」

「うん、それであの家を、オール電化にりフィームしたんだね。

里美さんに、合わせて・・・」

「ああ」

「直前まで、家を開ける事が多かったのも、そのためだね」

「ああ」

だんだんと、納得はしてきた。


「なら、トイレもウォシュレットに・・・」

「そこは、田舎のままがいいそうだ。それと、金がなかった」

まあ、後者は冗談だろう。


「でも、里美は生活費はもう、僕が稼いでいると言ってた」

「聞いたか?」

「それがわからないよ・・・」

父さんは、一呼吸置いて、答えた・・・


「それはな・・・」

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