第36話 男はみんな

「ねえ、基くん」

「何?」

「私を信じてくれてるよね?」

「どうしての?」

「答えて・・・お願い・・・」

何だか、神妙な顔つきだ・・・


「うん、もちろん・・・」

「ありがとう。ごめんね。さっ、食べよ」

いつも通りの里美に戻った。


畑に出て、さつまいもを育てる。

「もう、そろそろかな・・・」

里美のいう通り、板に着いてきているようだ・・・


このまま、ここで暮らすのか・・・

嫌、それはないだろう・・・


でも、それも悪くないな・・・


「基くん、お昼出来たよ」

「ありがとう。今、行く」

いつも通りの他愛のない会話、笑みがこぼれる。


僕は、都会で何をしてきたんだろうと、後ろめたさえ感じる。

でも、両親や学校の人たちの事をあまり思い出さない。


そういや、里美と未来の僕は、どうやって知りあったのか・・・

忘れかけていたが、この時代には里美はすでに生誕しているが、海外にいるらしい。

里美は、その事は話したがらないが、訊かないほうが吉だろう。


今は、里美との生活を楽しもう・・・


「基くん」

「何?」

「わかっていると思うけど、今都会に戻っても、元の木阿弥になるわ」

「えっ」

「だからもう少し、ここにいよ。ねっ」

「うん」

「よろしい」

何だか、奥さんというよりも、母親だな。


男の子は、母親に似た女性を奥さんにするというが、ウソではないかもしれない。

そういう意味では、男はみんなマザコンなのか・・・?


男子はたいがい否定するが、無意識のうちに選んでいるのかもな・・・


実年齢は、一回り以上も僕が上なのだが、精神年齢は里美のほうが上だな。

多分・・・

前にも思ったが・・・


「基くん、今日は午後から行くところあるから」

「幼稚園?」

「違う」

「じゃあ、どこ?」

「いいところ」

この村には、観光スポットはない。

ということは・・・


「列車で行くよ」

「電車?」

「電車じゃなくて、気動車だよ。まだ電化されてないから」

「あっ、そう」

鉄子だったのか・・・里美は・・・


あれは、電車とは言わなかったのか・・・


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