第34話 気付かなかった魅力

さつまいもには、肥料は不要、

与えれば逆効果。

微量でも、十分なので、初心者向け。


ただ、害虫には気をつけないといけないが・・・

かなりの広さが必要なので、今育てている場所は最適かもしれない。


収穫時期は、9月から10月、そろそろかもな・・・


「基くーん」

「はーい」

「昼ごはん出来たよ。

「今行く」


「はい、ご飯」

「ありがと」

「板に着いてきたね。」

「何が?」

「農作業の姿」

「褒めてるの?」

「うん」


他愛のない会話。

もう当たり前になってしまった。

今、これが失われるのが怖い。


「基くん、午後からは、わかってるね」

「うん」

幼稚園だろう。


「今日は、教室だからね」

「外じゃないの?」

「うん」

珍しいな。


「私も行くからね」

「うん」


里美と、幼稚園に向かう。

教室に入ると、園児たちが笑顔でむかえてくれる。

汚れない笑顔、大切にしてほしい。


「みんな、今日はこのお兄ちゃんが、絵を描いてくれるよ」

里美、聞いてない。

「みんな、何でも言ってね。このお兄ちゃん、描いてくれるから」

「はーい」

園児たちは、元気よく返事をする。


やられた・・・新手のいじめか?

里美よ、何が目的だ?


里美の方を見る。

ニコニコしている。


ふぅ、観念するか・・・


「お兄ちゃん、イルカさん描いて、イルカさん」

「イルカさん?」

「うん、イルカさん、イルカさん」

子供たちは、いっせいに声を合わせる。


山にいたら、イルカは珍しいな・・・

僕は仕方なく、ホワイトボードに描いて見せた。


子供たちの声が静かになる。

そんなに変か?


「お兄ちゃん、上手」

「絵が上手い」

尊敬の眼か、これは?


「次、ウサギさん」

女の子の声がする。


同じように、描いてみた。

「お兄ちゃん、凄い」


で、この日は子供たちのリクエストに答えて、絵を描いたわけだが、

何なんだ、このまなざしは?

よくわからん。


里美との帰り道、言われた。

「基くん、わかった?」

「何が?」


「君は、大勢の方から、必要とされているんだよ」

「えっ?」

「君の絵の腕前は、未来の君から見せてもらって知っている。

だから、自信を持ってね」


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