第32話 キャンプその2

里美に手を引かれて、水辺へと出る。

既に、子供たちは遊んでいる。


「お兄ちゃん、遊ぼ」

子供たちに、水の中へと連れて行かれる。

元気いっぱいだ。


僕が住んでいた町は、外で遊ぶ子供たちを見たことがない。

塾に行っているか、携帯ゲームで遊んでいるかの、どちらか・・・

その時は気にも止めなかったが・・・


子供のうちは、外で元気よく遊んだ方がいいかもしれない。

そうして、体力をつけておかないと、社会生活には耐えられないだろう。

学力は、取り戻せる。


「基くん?」

「えっ」

「どうしたの?考え事?」

里美が、心配そうに覗き込んでくる。


「大丈夫だよ」

「そっか、ほら、子供たちを見て」

里美につられて、小川を見る。


「みんな、元気だね。子供はこうあるべきだよね」

里美も同じ事を、考えていた。

そうだねと、言葉に出かかったが、飲み込んだ。


子供たちに連れられて入った水の中。

とても、冷たくて気持ちがいい。


そんなに深くない、僕の膝ぐらいだろう。

これなら、溺れる心配はない。


でも、その前に・・・

「何をしているの?」

里美に訊かれる。

「準備体操」

「いいから、行きなさい」


こうしてようやく、水の中に入った。


「お兄ちゃん、お魚さんだよ」

「そうだね。たくさんいるね」

「何て、お魚」

「イワナかな」

「これは?」

「鮎かな」

むろん、適当。


子供たちのほうが、詳しそうだ。


しばらくすると、里美が来た。

「冷たくて、気持ちいいね」

「うん、晴れてよかったね」

「私、晴れ女だもん」

「僕は、晴れ男」

+と+は、マイナスにはならない。


しかし、子供たちがふたりでいるのを、冷やかさないはずもなく、

「ねえ、お兄ちゃんとお姉ちゃんは、結婚するの」

素直に疑問を浴びせてくる。


ごまかそうと思っていたが、

「うん、そうだよ。お姉ちゃんと、このお兄ちゃんとは結婚するの。

式には来てね」

即答ですか?里美さん・・・


いつの間にか、時の経つのを忘れていた。


そして、クライマックスとなる。

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