第30話 夏の楽しみ

季節は夏も半ばとなる。

この村、河下村には少し大きい小川がある。


海がないかわりに、夏場になると村の人の憩いの場となる。

キャンプをするもの、釣りをするもの、そして泳ぐもの・・・


娯楽施設の無いに等しいこの村では、一番の名所。


「ねえ、基くん」

「何?」

「キャンプしよう」

「えっ」

「だから、キャンプ」

里美の言う事が、すぐには理解出来なかった。


「幼稚園の子たちを連れて、みんなでキャンプ」

「どこで?」

「あの小川で」

「いつから?」

「明日から」

いきなりすぎるよ、里美さん。


「みんなでバーべキューして、泳いで、釣りをして、楽しいよ」

「泳げない」

「じゃあ、水遊びでもいいから、行こう」

承諾するしか、なさそうだ。


ちなみに、この村の幼稚園には、夏休みがない。

あるにはあるが、休み中も、幼稚園に集まるので、

無いに等しいのだ。


「私も、付き添うから」

「楽しそうだね、里美」

「ビキニ姿見せてあげるから」

「持ってきてたの?」

「うん」

さすがと、褒めておこう。


「でも、僕は持ってきてない」

「大丈夫」

「えっ?」

「基くんの分もあるから」

男性用水着を見せる。


「用意いいね」

「うん」


ということで、明日から小川でキャンプ。

初めての気がする。


これはこれで、楽しみだ。

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