第28話  このままでは・・・

へとへとになる。

「僕は、完全に退化しているな」


でも、里美が迎えに来てくれた。

「お疲れ様」

笑顔で出迎えてくれる。

この笑顔が、栄養剤。


「帰ったら、すぐにご飯の支度するからね」

「ありがと」

その一言をいうのが、精一杯だった。


家に着く。

いつもなら、部屋の掃除をするのだが・・・

完全に体力はない。


補足だが、この村には老人ホームがない。

みんな元気なので、その必要がないからだ。

強いて言えば、診療所があり、そこがお年寄りの憩いの場となっている。

そこが、老人ホームのようなものだ。


人間は歳を取れば、子供に帰るという。

幼稚園児とお年寄りの精神年齢は、近いかもしれない。


「基くん、お待たせ」

里美は、てきぱきと料理をする。

「いつも、元気だね」

「元気じゃないと、君のカウンセラーは務まらないよ」

カウンセラーね・・・


「で、いつまで幼稚園に行くの?」

「私が、いいっていうまで」

「それは、いつ?」

「君次第」

当たり障りのない答えだ・・・


しかし、疲れきっているはずなのに、里美といると元気が出る。

僕も、知らない間に、惹かれているのか?


「基くん」

「えっ」

「明日からも、がんばろうね」

「うん」

いつものような、会話。


「お風呂、わかしてあるから」

「ありがと・・・って、それは僕の・・・」

里美は、頭を撫でてくる。


「君にはこれから、もっとがんばってもらうんだから・・・

私も、力にならないと・・・」

「でも・・・」

「君は気にしなくていいから・・・ね」

頷くしかなかった。


まるで家政婦さんだな・・・

「私が好きでしているから、気にしないで・・・」

里美は言うが・・・


このままでは、いけないな・・・


(基くん、確実に変わっているよ)

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