第27話 ステップアップ002

「基くん」

朝から里美に声をかけられる。

「どうしたの?」

「そろそろ、単調になってきたよね」

なっていないと言えば、ウソになるが・・・


「顔に書いているよ」

「えっ」

里美は、いたずらっぽく笑う。


「じゃあ、今日からステップアップする?」

「いいけど・・・何を?」

「まず朝はいつも通りの、ガーデニング」

「うん」

「昼ごはん食べた後に、詳しく話すわ」

何だろう・・・気になる・・・


昼ごはんを食べた後、里美に連れらて行った場所。

幼稚園だった。

この村で、唯一の幼稚園。


子供たちが駆け寄ってくる。


「基くん、これからしばらくは、昼から夕方まで、この子たちと、遊んでもらいます」

「えっ」

「君は、ここへ来てから、もう年配の方とは、どうにかお話出来るようになったよね?」

「里美が、手づだってくれたから」

「それだけではないよ。君が変わってきた証拠」

僕には、自覚はないが・・・


「でも、まだ同世代やそれに近い方と話すのには、ハードルが高い」

「うん」

「だから、今度はこの子たちと、仲良くなってもらうわ」

でも、それって余計に難しいんじゃ。

ストレスも、溜まりそうだし・・・


「小さい子は、人の心を見抜く力が、大人よりも優れている。

だから、この子たちと仲良くなれたら、また前進よ」

「簡単に言うけど・・・」

「ほら、もうなついてるでしょ?」

当たりを見回せば、子供がいっぱいだ。


僕くらいの歳の人が、珍しいとも言えるが・・・


「大丈夫、私も少しは手伝うから、がんばって」

「・・・うん・・・」

「もう、園長先生には言ってあるから」

やることが、早い。


承諾はしてみたかったが、甘かった。

子供は、エネルギーの塊だ。


子供たちが帰る頃には、完全にグロッキーだった。

幼稚園の先生、あなた方は立派です。


(基くん、君も立派だよ)

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