第23話 疑問
少し遅めの昼食を取る。
「基くん、お腹すいたでしょ?さあ食べて」
「ねえ、里美」
僕は、常日頃から疑問に思っていた事を、里美に訊いてい見た。
「里美は、いつ寝てるの?」
「えっ」
里美は、不思議そうな顔をする。
「いつも、僕よりも早く起きて、僕よりも遅く寝る」
「うん」
「睡眠時間は足りているのかなって・・・」
里美は、心配しないでという笑顔を向けた。
「なんだ、そんなこと」
「そんな事って・・・」
「心配してくれて、ありがとう。でも、大丈夫だよ。8時間は取ってるから」
そうは、思えない。
「体は、大丈夫?」
「うん、平気だよ。どうしても、具合の悪い時は、お医者さんに診てもらってるから」
「お医者さん?」
「うん、だから君は気にしないで、私に付いてきて・・・」
「でも・・・」
「大丈夫。私は強いんだから」
里美は、元気よくふるまう。
「基くん、ちょっとごめんね」
里美はそう言うと、僕の胸に手を当てる。
「少し薄くなっているね」
「何が?」
「君の心の殻」
「殻?」
「うん」
それ以上は、訊けなかった。
食事とか他の事でも、訊きたい事はある。
でも、教えてくれそうにない。
しばらくは、今のままが良さそうだ。
何度か厨房をのぞいた事がある。
もしかしたら、料理人がいるかもとか、出前とか、疑ったこともあった。
でも、里美が全て料理をしてくれている。
鼻歌まじりで、とても楽しそうだ。
「料理が趣味」というのに、ウソはない。
それ以来、厨房をのぞく事はなかった。
しかし、僕が時々厨房をのぞいていた事を、里美は気付いていたようだ。
(基くん、私の事は、大丈夫だよ・・・君の奥さんだもん)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます