第11話 明日から

「基くん」

「はい、里美先生」

「先生は、いらない」

「なに?里美」

よろしいとばかりに微笑む。


「まず水と食料は、一週間に一度宅配してくれます」

「うん」

「なので、その心配はないからね」

「スポンサーは?」

「しばらくは、ご両親から頂いてるわ」

「しばらくは」か・・・


「あのう、里美」

「どうしたの?」

「ガスがなくて、どうやって料理作ったの」

「訊いてない?」

「うん」

「ついてきて」

里美に厨房に案内される。


そういや、ここは掃除しなかったな・・・

そこをみて、驚いた。


「IH?」

「うん」

「いつの間に・・・」

「お義父さんと、お義母さんから・・・」

ご都合主義だな・・・


さっき掃除をし忘れていた、トイレと風呂を見に行った。

ぼっとん便所に、ひのき風呂。

変わっていなかった。


ホッとしたような、残念なような・・・


「基くん、話を戻していい?」

「うん」

「勉強は、私が教えます」

「里美が?」

「うん」

「出来るの?」

「永眠させるよ」

「お願いします」

「よろしい」

また、頭を撫でられる。

里美のクセなのか?


「ところで、里美はどこで寝るの?」

「基くんと、同じ部屋」

「ワンスモア」

「基くんと、同じ部屋で寝るよ」







長い沈黙が流れた・・・





「さすがにそれは、まずいかと・・・」

「大丈夫だよ、夫婦になるんだし、君は人畜無害だから」

褒められてるのか・・・見下されてるのか・・・


「それとも、私を襲う勇気ある?」

「・・・ありません・・・」

「うん」


(でも、少しは、狼になってよね。未来の旦那様)

里美の声は、この時も耳に届かなかった。


「基くん、これは私からのお願いだけど」

「うん」

真剣は表情をする里美がいた。


「男の子は、細かい事にこだわらないでね。君の悪い癖」

「でも・・・」

癖なんて、そう簡単には治らない。


「まず、その癖だけは治さないと・・・お願いね」

「・・・努力します」

「よろしい」

いつもの笑顔の里美がいた。


「後は、私に任せて。必ず君を変えて見せるから」

自信満々だった。

(私についてきなさいタイプだな、里美は・・・)


「じゃあ、今日は休もうか、基くん」

「えっ、いいの?」

「疲れたでしょ?明日はご近所への挨拶だからね」


ド田舎とはいえ、電気と水道は引いてある。

おまけに、IH化されている。


思ったよりも誇りが貯まってなかったり、雑草がなかったりもした。


これは、父さんと母さんが、あらかじめ準備しておいてくれたのだが、

それを知るのは、かなり後。


ふたりが家を開けていたり、帰りが遅かったのは、このためか・・・


つまり、僕より前に、父さんと母さんは、里美とコンタクトを取っていたことになる。


しかし、この時は気にもとめなかった。


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