第8話 里美の待つ田舎へ

翌朝、両親と共に家を出た。

学校ではない。


父の田舎へ、静養するためだ。


父の田舎は、かなり遠いので、早朝に出ないと真夜中になる。

昔は、夜行列車もあったが、今はない・・・


里美、未来の里美だが、どういう経緯で両親と、コンタクトをはかったのかは、知らない。

でも、両親の人を見る目は、確かかもしれない。

そう、信じておこう。


「父さん、生活費は?」

「自分で、何とかしろ」

一括された・・・


ただ、交通費だけは、出してくれた。

さすがに、小遣いでは厳しい値段だ。


既に学校には、退学届が出されている。

正直、解放感に満ちている。


むしろ、せいせいしている。

学校の連中も、僕の事は忘れるだろう。

というか、忘れてほしい。


最寄駅から、ターミナル駅まで、私鉄で移動。

ここから、JRの特急に乗ることになる。

「父さんと、母さんは、ここまでだ」

「うん、ありがと」

「その魂の抜けた顔が、生気のある顔になることを期待してるぞ」

そういって、紙袋を手渡された。


「これは?」

「母さんが作った弁当だ。車内で食べろ」

母さんは、相変わらず寡黙だ。


そして、入り込んできた特急に乗った。

「特急に、乗せてくれるなんて、ふとっぱらだな」

でも、特急に乗らないと、それこそ遅くなる。

ご好意に、甘える事にした。


車窓はどんどん、田舎へと移り変わってゆく。

でも、こんなのは、まだ序の口。


これから、ますます秘境になる。


終着駅で、別の特急に乗り継ぐ。

それを、3回繰り返して、目的の駅にようやく到着。

ちなみに、母さんの弁当は美味しくいただいた。

それだでは足りないだろうと、駅弁も入っていた。

しかし、食の細い僕は、ふところにいれた。

(そういえば、久しぶりだな。母さんの手料理・・・)


でも、ここから車で、2時間かかる。

鉄道の技術はすさまじいが、ここは昔のまま止まっているようだ。


タクシーを拾い、運転手さんに目的地を告げる。


「河下村まで、お願します」



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