第7話 出発前夜
「何?父さん、母さん」
「まあ座れ」
そう言われて、床に座った。
「久しぶりだな。話すの・・・いや、会うのも久しぶりか」
「うん、随分あってなかったね」
父さんは、お茶をするる。
母さんがただ、父さんの隣にいる。
空気が重い。
そんなに、嫌か?僕のこと・・・
「実はだな」
「うん」
「お前、しばらく父さんの田舎へこもれ」
「えっ?」
父さんの田舎は、たしか山奥のそのまた奥。
祖父母が生きていたころは、よく遊びに行った。
その頃から、ひとりで行っていた、
当時から、両親は忙しく、家族旅行の経験はない。
「でも、じいちゃんとばばちゃんはもう・・・」
「大丈夫だ。家はそのまま残してある」
「転校ってこと?」
「ちがう。学校は辞めてもらう」
「どうして?」
正直ホッとしたが、驚いて見せた。
「お前は、親をなめてるのか?お前が人間関係で悩んでいる事はお見通しだ」
さすが父さんと言いたいところだが、それだけではない・・・
見落としもあるのが、普段、会話のない証か・・・
でも、人間関係で悩んでいるのを見抜くのはさすが親だ。
でも、母は黙ったままだ。
「そこでだ。しばらく、田舎で静養してこい。
あそこには、何かある」
「何かって?」
「それは、お前が見つけることだ」
未来の父さんが、里美を僕のフィアンセと認めたのがわかる気がする。
ここで、母さんがようやく口を開いた。
「学校、つらかったんでしょ?」
僕はうなづいた。
学校が辛いから辞めさせる。
一見甘いようだが、田舎に隔離させるのは、厳しいと言える。
まあ、ありがたい。
「で、いつから行くの」
「明日からだ」
「急だね」
まあ、思い立ったが吉日、そのほうがいいだろう。
持っていくものもないし。
「1人でだよね」
「いや、向こうで面倒みてくれる人がいる」
「面倒?」
「家政婦でも、メイドでもない。カウンセラーだ。もう、向こうで待ってる」
母さんは、また口を閉ざした。
母さんは、ゴシップや他人のうわさ好きな、典型的なおばさんとは違う。
珍しく、不言実行を絵に描いたような人だ。
未来の母さんは、反対しなかったのか?里美の事を・・・
それとも、僕にはぴったりと判断したのか・・・
「で、そのカウンセラーさんだが、若い女性だ」
「名前は、砂山里美さん・・・だよね」
父さんは、驚いた。
「なぜ知ってる」
里美さん、下準備とはこの事だったんですね。
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