第5話 世話女房
「じゃあ、基くん、一週間後にまた来るからね」
里美は、去ろうとするが、訊いておきたい事がある。
「なあ、里美」
「何?」
「今、この時代には本来の君、そして、未来から来た君のふたりがいるんだよね?」
「うん」
「まずくないの?」
タイムパラドックスという話だ。
同じ時代に、自分と同じ人間が複数いてはいけないというSFでは、よく聞く話だ。
「大丈夫だよ、場所は言えないけど、この時代の私は海外にいるの。
だから、顔を会わせる事はないから、その心配しないで」
「もうひとつ、里美の時代からしたら、この時代は過去になるよね?」
「うん。そうだよ」
「過去を変えるのはまずいのでは?」
もし過去に戻れば、虫一匹殺してはいけない。
これも、SFでは必ず出てくる話だ。
「大丈夫。変えるのは歴史でなく、君自身だから。
歴史に影響が無ければ、過去を変えてもいいわ」
「つまり?」
里美は、簡潔に説明してくれた。
「シェークスピアの言葉、知ってる?」
「知らない」
「『世の中には、幸も災いもない。考え方でどうにでもなる』」
「はじめてきいた」
「つまり、今の君はネガティブにしか、考えられないけど、それをポジティブ思考に私が変えてみせる。
そうすれば、君自身に変化が訪れるから」
里美がそういうなら、期待してみよう。
初対面だけど・・・
「でも、どうやって引っ越しの口実を作るの?」
「数日後にわかるよ。じゃあ、一週間後に・・・」
里美は去って行った。
本来いた未来に帰るのか・・・
追及はしないでおこう。
まだ自体が飲み込めないが、里美が来る一週間後を待とう。
・・・ん、もう朝か・・・
今日はだめだ。学校休もう。
あれ、メモがある。
「基くん、ずる休みは許しません。愛する里美より」
世話女房だな・・・
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