第3話 目的

「で、里美だっけ?目的は?」

「目的?あっ、忘れてた」

未来の僕に訊きたい。


【どうして、この人を好きになった】


「詳しいなれそめは、置いておいて」

置いとくんかい。


「君は、友達いないよね?」

「うん」

「うんって、否定しないの?」

「事実からね」

「なら、話しやすい。私は今の君を変えに来ました」

「僕を変えに・・・?」

里美は、続けた。


「君は、自分の殻に閉じこもっているね」

「はい」

「なかなか、人に心を開けないね」

「はい」

「素直だね」

「はい」

「はいって・・・(まあ、そこを好きになったんだけど・・・)」

里美が小声で言った事は、僕の耳には届かなかった。


「よく、≪自分が変われ≫というよね」

「よく聞くね」

「でも、それが出来ないから、苦しいんだよね」

「その通りです」

「でも、結局周りは上から目線だよね?」

人間って、そういうものでしょう。


「だから、私が君の心を隠している殻を、叩き壊しに来たの!」

「どうして?未来の僕と、うまくいってないの?」

「ううん、良好だよ、とても・・・」

「なら、いいんじゃ・・・」

里美は、さらに睨みをきかせてくる。


「いいや、よくない」

「なぜ?」

里美は詰め寄ってくる。


「いい?私はいい。でも、生まれてくる子供はどうなるの?

父親になる君が自分の殻に閉じこもってると、子供がかわいそうだよ」

「それは、そうだけど・・・」

「でも、君は・・・いいや、人間の精神力には限界があるから、

自分ひとりの力では、殻は破れないの。

特に君の場合は、障害があるから、なお困難」

「そこまでいいますか・・・」

里美は、僕の肩を掴み、壁に押し付ける。


そして、僕を見上げて叫んだ。


「私が、君を変えて見せる」


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