第2話 正体

「婚約者?」

「うん」

「お休み」

僕は、寝ようとしたが・・・


「だから、起きろ!」

「あのう、人違いでは?」

「違わないわよ。君は、高山基(たかやま はじめ)くんでしょ?」

「そうですけど」

砂川さんは、ふんぞりかえる。


「信じてくれた?」

「いえ、あなたが砂川里美さんだという、証拠を見せて下さい」

「証拠?」

「ええ、例えば僕によこしたハガキの文面を言うとか・・・」

「言ってもいいけど、君、破り捨てたでしょ」

「そうでしたね」

しばしの、沈黙が流れた・・・


「ほら、免許証、間違いないでしょ?」

「確かにそうですね・・・ということは、僕よりも・・・えっ」

一気に目が覚めた。


「この元号は?」

「平成の次の元号よ」

「砂川さんの生年は、平成××年?ということは?」

「うん、この時代ではまだ赤ちゃんね」

「まさか、未来から?」

「うん」

やはり、いたずらのようだった。


「では、そういうことで」

「うん、お休み・・・じゃない」

「何なんですか?」

「だから、私は君の婚約者」

「ですから、どういう経路で、そうなったんですか?」

もし、フィアンセというのなら、いつ、どういう形でフィアンセになったのかを、

訊いてみたい。


免許証なんて、偽造できるし、興味も出てきた。


「まず、政略でも、世間体でも、金目当てでもないわ。

互いが愛し合っての結果で、双方の両親も合意しています」

「ふむふむ」

「でね、経路なんだけど・・・」

「はい」

「止めておくわ」

「どうして?」

「だって、未来がわかれば、面白くないし、歴史を変えたくないもん」

この人、作家にはなれないな・・・


「で、そのフィアンセが、どうしてこの時代に?」

「それなんだけど・・・」

「まさか、未来に来て救ってほしいとか?」

「テレビや映画の見過ぎだよ」

あなたがいいますか?


「なら、目的を聞かせて下さい」

「話せば信じてくれる?」

「内容にもよりますね」

砂川さんは、意を決したように話だした。


「その前になんだけど」

「はい」

「さっきから、心の中で砂川さんと言ってるけど、里美と呼んで、フィアンセなんだから」

「さすがに、初対面の方には・・・」

「私は、初対面ではないわ」

「ですが・・・」

砂川さんは、睨みつけてきた。


「わかりました。里美。」

「よろしい。あと敬語はNG」

「さすがにそれは・・・」

さらに睨みがきつくなる。


「わかったよ。里美」

「よろしい。基くん」


この人と、本当に結婚したら、尻に敷かれるな・・・本当に・・・

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