フィアンセ

勝利だギューちゃん

第1話 夜中の訪問

高校2年生の1学期の始業式の終わった後、

僕は、まっすぐに帰宅した。

帰宅部の僕には、関係ないし、友達もいない。

誰からも、気に止められず、僕も気に止めない。


両親は共働き、兄弟もいない一人っ子。


なので、1人で行動するのが当たり前であり、

それが、僕の日常だった。


その日もいつものように帰宅して、ポストを除く。


(あれ?ハガキが入ってる?珍しいな)


ちらしはよく入っているが、ハガキは殆ど来ない。

来ても、ダイレクトメールで、個人宛はない。


(父さんか、母さん宛かな)

そう思い良く見ると、僕宛だった。


差出人は、砂山里美・・・

知らない・・・

いたずらか・・・


その場で破り捨てた・・・


僕は、幼稚園から現在に至るまで、文集や名簿、卒アルなどは、処分している。

思い出したくないからだ。

なので、確かめようがないが、いたずらか冷やかしに間違いない。


(破棄したの正解だな)


そして、ひとりで調理をして、ひとりで食事をし、入浴をして、床についた。

戸締りはしてある。

鍵は、両親がそれぞれ持っているので、心配ない。


せめて、夢くらいは、いいの見せてね・・・神様・・


「・・・起きて・・・」

すやすや

「ねえ、起きてってば」

すやすや

「起きろ!」


誰だよ、僕の眠りを妨げるは・・・

神様、ここまでやりますか?


「おっ、やっと起きたね」

「君は?」

「知らないとは言わせない」

「知らない。お休み」

僕は、ふたたび眠りへとついた。


「永眠させてあげようか?」

それは、さすがに困る。


僕は仕方なく、起き上がった。

そこには、女の子がいた。


「おっ、やっと起きたね」

「で、どちらさまですか?」

女の子は困ってる。

寝ぼけていても、それはわかる。


「本当にわからない?」

「うん」

女の子は考えて・・・


「ヒントをあげるから、自分で考えなさい」

「面倒くさい」

「何か言った?」

「面倒くさい」

「ワンスモア」

「面倒くさい」

「本当に永眠させるよ」

仕方ない。

まあ、答えておこう。


「で、そのヒントは?」

「ポスト、手紙、破り捨てた」

「砂川里美さん?」

「正解」

女の子・・・もとい、砂川さんは拍手する。


「じゃあ、そういうことで・・・」

「うん、お休み・・・じゃない、起きろ!」

「何なんですか?もう」

「何言ってるの?せっかく来てあげたのに」

頼んでないんだが・・・


「で、何の用ですが?手短に頼みます」

砂川さんは、怒ったような表情で、答えた。


「わたしは、君の婚約者です」

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