クランー8

トキ達が出掛けて屋台の店主に絡まれてた頃・・・




「やっぱり可愛いねルティは!」


「キュイ!」


「あの・・・メリルさん?


そろそろ時間ですので離れてもらえますか?」


「え~もう時間なの?早くないかな?」


「これでも身内時間で長くしてますからね?


いい加減しないと強制排除しますよ?


どんだけ時間掛ければ良いんですか?


2回も説得してますよね?」


「キュゥ・・・」




ルティの愛護部屋でメリルがルティの愛護をしていた。


愛護時間が過ぎたのでヴァイスが


メリルを説得して次の人に回そうとするが


メリルが離れなくて苛立ちを感じていた。


愛護部屋は最高3分で回している。


しかし10分もメリルが独占しているために


後ろの方から文句を言う客が現れている。




孤児院の一階は真ん中に入り口があり


その両隣に外へと繋がる扉を付けた部屋がある。


つまり外に行列が出来ている状態である。




「・・・列が進まないんですよ?


離れないならウォルさん?隔離お願いします」


「・・・了解した」


ため息を吐いてウォルがメリルに


手を出そうとした瞬間にメリルが告げる。




「え?私で最後じゃないの?」


「何を言ってるんですか?


後ろに住民の行列出来てますよね?」




「え?・・・あれべラムの住民じゃないよ?」


「「え?」」


「キュイ?」


「ルティ愛護会の会長として言うけどね?


どんな人間が集まってるか直ぐに分かるんだよね。


基本的に愛でて可愛がるかストレスを和らげる。


でもね?武器持って愛でるのはどうなんだろうね?」




ヴァイスはメリルが愛護会長してるのに驚いたが


部屋の外の行列を見ると文句言ってる人の中に


武器を構えて並んでおり


杖を持ってぶつぶつ呟いてる人達がいる。




「ん?不味い!皆さんしゃがんでください!」


「・・・多火球マルチファイアボール!」


「・・・多水球マルチウォーターボール!」


「・・・多土球マルチクレイボール!」


「・・・多風刃マルチウインドカッター!」




外に複数の属性魔法が浮かび上がる。


ヴァイスは魔法を撃ち出す瞬間を確認して


全員をしゃがませた。


そして部屋の出口に面する壁に


風の壁を3重に作り守りを固める。


ドカーン!




2階の部屋にまで撃ち込まれて衝撃が部屋に走った。


天井に罅が入り崩れ落ちそうになるのを見て


ヴァイスは部屋をドーム状に風の壁を作り替えた。


外側の風の壁の表面は外に流れるように。


真ん中は全面を押し出す流れに。


内側は上へと巻き上げるように作ってる。


天井が崩れ落ちてきたが欠片が


壁の内側に入ることは無く外に流れていった。




「あ~あ…壊れちゃったよ…


メリルさんもしかして気付いてルティ守ってました?」


「当たり前でしょ!何のための会長よ!」


ルティを抱きながら胸を張るメリル。




「気付いてたら言ってくださいよ!


お陰で孤児院壊れちゃったじゃないですか!」


「え?ウォルは気付いてたよね?」


「メリルに愛でられるルティに嫉妬して


分からなかったよ・・・」


「キュゥ…」




「いやいや、気付きましょうよ!


こっちは仕事に専念してるんですから!


ウォルさんがルティを愛でない理由がそれですか?


嫉妬して気付かなかった罰としてウォルさんは


外に出て彼らを捕まえて尋問してもらいますよ?」


「罰が捕縛って・・・」


「私も行くからね?可愛いルティが


酷い目に合いかけたんだから!」


「ウォルさん…悲しさを含ませた


笑顔をしないでください…


では2人とも宜しくお願いしますね?」




ヴァイスは風の壁を解除して2人を送り出して


再びドーム状の風の壁を作り上げる。




「ルティ?最低50人いるけど2人なら大丈夫だよね?


ランクSパーティーの一員だしね?」


「キュイ!」




ヴァイスは防御を固めながら現場の状況を確認する。


目に見える範囲で男女混合の集団。


後列に魔法使いが配置され守るように


盾と剣を持つ人が複数いる。


前列には片手剣と盾、両手剣を持つ者。


中列に槍を構えており集団戦闘に


優れている様に思えた。




対してメリルは私服で武器無し。


ウォルは背中に槍を帯びており


今背中から外して構えた。




集団は相手が二人だと理解すると笑い出す。


「坊や達が相手するのかい?


この人数に勝てるとても思ってるのかい?」


「止めときな。俺達の狙いはそこの魔物だからよ?


怪我する前に離れな!」


「魔物ってルティの事かな?」


「その通りだよ嬢ちゃん。


魔物は街に居てはいけないからね?


冒険者としての本質の魔物討伐させてもらうよ」


「それって依頼なのかな?」


「さてね?そこまでは教えられないよ?」




今の会話を聞いたウォルは槍を背中に戻して


腕を組んで立つ。


「坊やは理解してくれたようだな?


嬢ちゃんも大人しくして貰おうかね」


「あ~あんたら勘違いしてるからな?


俺が武器を戻したのは出番がないと


判断したからだ。」


「どういう事だ?」


「あんたらの言葉にメリルの琴線が触れてね?


怒らしちまったよ?御愁傷様。」


「ハハハ!何を言い出すかと思えば…


私達に対して1人で立ち向かうつもりなのかい?


命知らずにもほどがあるよ」


「だろうな?でも本人は戦闘開始の合図待ってる。


だから俺が合図するから・・・頑張ってくれ」




ウォルが足元に落ちてる小さな瓦礫を持ち


敵目掛けて投げた。


投げた瓦礫を集団の1人が盾で防ぐ。


カーン・・・


かん高い音が響いて戦闘開始のゴングが鳴った。


メリルが素手の私服。集団は武器有りの普通服。


メリルが一撃でも食らえば直ぐに終わる戦闘だが


メリルの気迫は直ぐに終わらせる気配を


感じさせなかった。




メリルはルティの事を気に入っている。


そんなルティを魔物討伐と言い放つ集団が


気にくわないし苛立ちを募らせる。


メリルは合図の音と共に前へと駆け出す。


目の前には武器の波。


そんな波を正面から立ち向かうメリル。




集団の前列は速く動くメリルに対応して


隊列を組み直す。


盾持ちを前に出して両手剣を後方に動かす。


盾持ちは円形の盾で30~60cmの円盾を


左腕に固定し右手に同じサイズの片手剣を持っている。




メリルは1人の盾持ちの前に向かう前に


前方へ地面を抉りながら蹴り出す。


蹴られた土が盾持ちに目潰しとして使われたのに


気付いて盾持ちが盾で顔を守る。




メリルは1人の盾持ちの盾の下縁を右手で掴み


降ろさないように固定して


敵の空いている左腹に右足で蹴りを打ち込む。


敵は突然の衝撃に息を吐いて横へと


飛ばされそうになるが膝を曲げて重心を下げる事で


踏ん張る事が出来たが


右手の剣を無意識に手放してしまった。




メリルは落ちた剣を拾わせないように


姿勢を戻してしゃがみ剣を拾って敵の後方へ投げる。


目標は両手剣を持つ人。


剣を投げる前に石を投げ剣から意識を逸らさせて


避けた場所に剣を投げて肩へと剣が刺さる。


うめき声を上げてる両手剣の敵に盾持ちが目の前に


飛んで表れて両手剣の切っ先を盾持ちの脇腹に


盾が頭へとぶつかり互いに傷付けあい倒される。




仲間が倒された姿を各自が見ている隙を見逃さない


メリルは各盾持ちの後ろに表れては


首を腕で後ろへ力を入れて膝裏を蹴り後方に倒していく。


倒された際に落とした片手剣を拾い後方へと


投げて槍をすり抜けて各場所に刺して


槍持ちを倒していく。




魔法使いはメリルに向けて水球を放つが


敵の仲間を盾にされて阻止される。


全ての魔法使いが火球や風刃を前方に繰り出すが


全て仲間を盾にされて焼かれ、切られて


うめき声が周囲に流れ出す。




魔法使いの位置まで着いたメリルを見て


敵の魔法使いは魔法を使わずに咄嗟に


杖を振るい攻撃をするが


直線的な動きを見切られ


振りかぶった後の隙を付かれて顎に拳を打たれる。


脳を揺らされその場に崩れていく魔法使い達。


50人程の集団がうめき声をあげながら


地面に倒された。




メリルはウォルから縄を受け取り


全員を捕縛した。


「ルティちゃんを討伐しようとした罪は重いよ!


ルティ愛護会の皆でボコボコにするからね」


「お疲れ様。メリルは怪我無いかな?」


「ウォル!大丈夫だよ!今から全会員連れてくるから


見張っててくれる?」


「ああ、了解した」


メリルは孤児院から走っていった。




「ウォルさんお疲れ様です。


お聞きしたいんですけど


ルティ愛護会って何人いるんですか?」


「さあ?分からないがメリル会長曰く


100人以上はいるとか・・・」


「・・・ルティの小物作らないといけませんね」


「ヴァイスはこんな時でも商売に


結びつかせるんだな…」


「当たり前ですよ!何のための愛護部屋ですか!


しかしルティが襲われたということは・・・」




ヴァイスはルティ愛護部屋の反対側の


フィル相談室を向くと・・・


「弱すぎないか?


私の動きに追い付けてないんだけど?」


「そりゃそうですよ!


主殿が言ってるじゃないですか!


普段より制限しないと駄目だって!」


「こんなに一方的なのは初めてだな!


つまらなかったよ?」


「だから制限するんですよ!


じゃないと今みたいな弱いもの苛めになりますよ?」




フィルの相談室でも同じように襲撃を受けていたが


アーニアが制限せずに攻撃をしたせいで


全員が地面に下半身が刺さっていた。


最後の1人を埋めようとしたところを


フィルが宥めていた。


アーニアは気絶している敵の首根っこを


掴んだままで愚痴っている。




「ヴァイス?アーニアって・・・」


「スーサイドで暮らしてましたからね…


加減忘れて圧倒的な力で倒したのでしょうね」


「俺アーニアに勝てると思う?」


「無理ですね!先生の仲間の中でも1、2を争う


強さを持ってますから!」


「流石はアマゾネスって誉めれば良いのか?」


「その言葉しかないですよね…


この光景を見てしまうと・・・」


「キュゥ…」




ウォルはアーニアはシルドより強いのでは?


と考えてしまった。


ヴァイスはこの光景をどうしようか?と


ルティの小物は何にしようかを悩んでいた。






「ただい・・・なんじゃこりゃあ!!」


「ワウゥ!!」


トキとシルが孤児院に戻って来ると


孤児院が一部壊されており


ルティ側の庭で縛られている集団を


200を超える老若男女の列が並び


ボコボコにしていた。


ボコボコにし終わった老若男女が


ルティを愛でている。


集団をメリルとウォルが見張っている。




フィル側の庭を見ると地面に複数の人間が


ぐったりとしながら生えている。


その中でフィルに相談をする列が出来ている。




「あ、先生お帰りなさい!


ルティの新しい商売が見つかりましたよ!」


「ヴァイス?今の現状とその言葉合ってないぞ?」


「トキ!私もう少し加減しないと駄目みたいだね?」


「あそこの埋まってるのアーニアがしたのか!?」


「うん!そうだよ!偉い?」


「すまん、偉いと言えないわ・・・


とりあえず何が有ったか説明してくれ…」




トキはヴァイスとアーニアから事情を聞いて


現状に納得した。


「なるほどねえ・・・襲撃か・・・」


「そうなんですよ!メリルさん1人活躍しました!」


「ウォルはどうしてたんだ?」


「メリルさんの怒りを浴びないように


後ろで佇んでました」


「・・・そうか…


後でこいつら尋問するからそのまま放置な?


俺は孤児院の子供達の勉強を見に行くから


最後列まで消えたら呼んでくれ!


明日から孤児院の修復作業に入るからな?


愛護部屋は暫く中止だから伝えといてくれ!」


「了解しました先生!」




トキはシルと共に孤児院の学舎に足を運んだ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

説教好きな冒険者~全てに怒れる召喚されし者 アールエス @AaruAce

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ